みかん小説
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"七通の退職届と八十件の着信" 第3話

声をかけられた青は、緊張で直になりながら、たどたどしいがはっきりとした本語で答えた。

「はい。アンです」

答えたのは、ベトナムから本にやって来て目になるアンだった。

その瞬、背からつかつかと股で割り込んできた川が、アンの肩を押し退けるようにして歩にた。

「ああ、野さん。それはうちのベトナムの若い子でしてね。械に材料をセットさせただけですよ。刃物の選定も、削る順の段取りも、全部俺が決めて指示をしてますから」

アンは何も言わず、ただ静かにをげると、再び号の制御盤へと向き直った。

しかし、私はっていた。その部品の複雑な加プログラムをパソコンで組みげ、膨張を考慮して刃物の当てる順番を緻密に構築したのは、アン自だったのだ。

野課は、川の言葉にどこか釈然としない表を浮かべ、元のクリップボードに挟んだメモ用に何かを静かにき留めた。川のろでは、若職の平野くんが、川の嫌を取るようにへらへらと笑いを浮かべていた。

見学が通り終わり、野さんをので見送った、事務所に戻ると、川が私のデスクのにずかずかとやって来て仁王ちになった。

「お嬢。さっき客ので、偉そうに測定データや公差の話をしてただろう」

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私は帳簿から顔をげ、静に返した。

「野課から、次元測定での測定の頻度について質問されたので、事実をお答えしただけです」

川は袈裟に肩をすくめ、い溜息を吐き散らした。

「ああいう理屈っぽいのは余計なんだよ。客が見に来てるのは職の現なんだ。奥のパソコン部の机の空論なんか、客はこれっぽっちも聞きたかないんだよ」

パソコン部――それは、事務所の奥をパーテーションで区切って設けたさな作業スペースのことだった。そこには、次元CAD/CAMを使って加プログラムを作成するパソコンデスクと、温を厳密に度に保った恒温の精密検査が備えられていた。

川は、その部を頃から「パソコン部」と嘲笑交じりに呼んでいた。そこで々を悩ませ、図面と格闘していたのは、ベトナムから来たのうちのだった。

「事務所のが、現の削りにをすな。伝票の数字しか見てない素に、職の削りの神髄が分かってたまるかよ」

川が吐き捨てるように言ったその言葉に、私がりを堪えて言い返そうとした瞬、横から伸びてきた父のが、私の肩を静かに押し止めた。父は何も言わず、目配せだけで私を制した。

川の言う「数字しか見てない」が々算段する売やキャッシュフローによって、の価な切削油も、交換用の精度エンドミルも、職たち全員の料も滞りなく支払われているのだという現実は、あの男ののには微もしていないようだった。

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製品の見積もりを巡る打ちわせの席でも、川の態度は常に同じだった。

私が属材料の仕入れ単価、加にかかるサイクルタイム、減価償却費を正確に積みげて適正な見積価格を弾きすと、横から覗き込んだ川はあからさまにを鳴らした。

「職の腕の値段が、そんな卓の計算でるわけねえだろうが。お嬢の見積もりは、いつだって職の技術を売りしすぎなんだよ」

それならばと、私が真顔で尋ねる。

「では、職の腕の値段というのは、具体にどのような基準で算すればよろしいのですか?」

川は腕を組み、ふんぞり返って答えるだけだった。

「そんなもん、培った勘と経験に決まってるだろうが。数字で表せるようなっぽいもんじゃねえんだよ」

川が煙を吸いに部をてった、父はめた番茶をすすりながら、ぽつりと漏らした。

「川は腕がある。だがな朋子、腕がある職ほど、自分の目に見えない確固たるものを信じようとしないんだ」

私は納得がいかず、父に詰め寄った。

「だったら、お父さんが社としてガツンと言ってあげればいいじゃない。このままじゃ、どんぶり勘定で会社が傾いちゃうわ」

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