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"七通の退職届と八十件の着信" 第25話

しかし、部品を精密な定盤のに置いた瞬、カタカタと微細なガタつきがじた。肉の壁の部分が、目に見えない切削によって微妙に反り返っていたのだ。

「刃物の当て方が悪かったんだ。個目で直す!」

川は帳の数字の横に何かをき殴り、自分の勘だけで補正値を打ち直した。

だが、個目は反りが減ったものの、今度は箇所の基準穴ピッチがズレているようだった。「ようだった」というのは、確かめる術が現になかったからだ。次元測定がないため、ミクロン単位の幾何公差を測定できない。県の業試験の測定予約は、最でも翌週の曜まで埋まっていた。

個目、個目と削るたびに、寸法は迷を極めた。

個目を削り終えた頃には、のは真っ暗になっていた。

個すべてが、どこかが狂っている。しかし、どこがどれだけ狂っているのか、誰にも分からない。

「おかしい……械が違えば数値が変わるのは当然だが、号じゃこの数字で毎朝バチッと決まってたんだ! ここでもせるはずなんだよ!」

川は脂汗を流しながら、帳を睨みつけて同じ言葉を繰り返すばかりだった。

の隅で片付けをしていた平野くんに、岩佐さんが青ざめた顔で打ちした。

「……平野。森でこの部品の加プログラムを組んでたのは、体誰だったんだ?」

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「フックさんです」

平野くんは即答した。

「……治具を設計して削ってたのは?」

「アンさんです。先代の社と緒に作ってました」

「最の……荷判定の測定をしてたのは?」

「ホアンさんです。測定データを見て、補正値を計算してに渡してました」

岩佐さんは絶句し、川の背を見つめた。

川は凍りついたようにかなくなり、やがて絞りすように呻いた。

「……あいつらは、械に数字を打ち込んでただけの僧だろうが! 段取りを決めてたのは、浩さんと俺だ!」

しかし、その声には、もはや以の張りは微もなかった。

片付けのを止めていた別の本職が、満を抑えきれずに呟いた。

「治具も正確な加条件もないのに、なんで産栄さんや扇原さんに『全部できる』なんて呂敷を広げたんですか……」

川はその職を血った目で睨みつけたが、何つ言い返すことができなかった。

平野くんはその、森精にいた頃、自分が職たちの仕事の何を見ていなかったのかをいり、背筋が凍りついたという。川の削る部品が発で決まっていたのは、川の腕のおかげなどでは決してなかったのだ。

そのの夜過ぎ。

自宅で夕の片付けをしていた私のスマートフォンが、激しく振した。

ディスプレイに表示された名は――『川正』だった。

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私は濡れたのまま、点滅する画面をややかに見つめた。コール音は回以鳴り響いて切れたが、分に再び鳴り始めた。

私はなかった。父の革鞄からノートを取りし、着信の刻を記録した。

その夜だけで、着信は回に及んだ。最の着信は午零の直だった。

翌の曜、話は朝から鳴り始めた。

昼までに回、夕方までに回。

やがて、の連絡用に使っていたLINEグループを通じて、川から私個宛てに直接メッセージが届き始めた。

『し相談したい。頼むから話にてくれ』

私は既読をつけたまま、切返信しなかった。

翌の曜、に勤した朝半から話は鳴り続け、そのの着信は回に達した。

昼過ぎ、通目のLINEメッセージが届いた。

『フックとだけ話させてくれ。分でいい』

画面を見た私は、わず息を呑んだ。

――フック。

あの男が、ベトナムの彼らを名で呼んだのを、私はまれて初めて目にした。

何もの、「おい」か「ベトナムの」としか呼ばず、野課ので「ただボタンを押しているだけ」と見した相に対し、自分のがちかなくなった途端、藁をも掴むいでその名を打ち込んできたのだ。

りとともに、言葉にできない誇らしさが胸を満たした。

あなたが数にすら入れていなかったに、あなたは今、無様に縋り付いているのだ。

翌の曜の朝には、通目が届いた。

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