"「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝" 第16話
たちの連名状と、頑なる公正証
庭裁判所の調査は、それだけに留まらなかった。 翌週、佐藤調査官は集落の公民館を訪れ、たちへの聞き取り調査を実施した。 そこで待っていたのは、裁判所の官僚たちの像を絶する景だった。
公民館のには、の悪いハツを先に、藤をはじめとする集落の老たち数名が、全員れ着を着て勢揃いしていたのだ。 「調査官さん!」 老の藤が、机のにドンと叩きつけるように置いたのは、模造にびっしりとかれた『嘆願』だった。 全員の署名と、朱肉の鮮やかな拇印が押されている。 「佐伯さんがボケとるだと!? 寝言を抜かすのもいい加減にしろ! のの、を過ぎたハツさんのまで、毎朝暗いうちからでを掻いてを拓いてくれたのは誰だとうとるんだ!」 「そうです!」ハツが涙ながらにを乗りした。 「うちの歪んだ引き戸も、壊れた戸も、佐伯さんが鉋で削って品みたいに直してくれたんだよ! 銭のも受け取らずにだ! あんなにが冴えて、筋の通った派なをボケ老呼ばわりするなんて、罰が当たるよ!」
さらに、町の診療所の老医師が作成した診断が提された。 『川式簡易能評価スケール:点満点点。認能のは切認められず、極めて清。
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歳にして驚異な判断力と体力を保持している』 医師の所見欄には、太い万でそう殴りきされていた。
だが、の目論みを根底から砕した決定な証拠は、町内で個事務所をく司法士・森田によってもたらされた。 森田が庭裁判所に提したのは、通の厳封された公類――源次郎がの、信州へ移してもなく、松本の公証役で作成していた『公正証遺言』の謄本だった。
「佐伯源次郎さんはね、移直、自らのに万がのことがあったを定し、この遺言を遺されていたのです」 森田司法士が、調査官のに類を広げた。 そこには、法に切の反論を許さない、確な遺志が記されていた。
、野県〇〇郡〇〇の林、源、ならびに敷の全財産は、実孫・佐伯翔太に包括遺贈する。 、源の永続な環境保全と使用権の管理は、峰酒造株式会社および本集落の自治組織に信託するものとする。 、実子・佐伯、ならびにその配偶者・麗子に対しては、における著しい虐待および背信為に鑑み、遺留分を除く切の相続財産を廃除する向を付言する。
「公証の面で作成された公正証です」 森田は厳かに告げた。 「作成当、公証が佐伯さんの精神状態と判断能力を厳密に確認しております。
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佐伯さんは、ご自の財産が欲な男によって切り売りされ、き妻のいとの源が破壊されることを、もから完璧に見通しておられたのです」
調査官の佐藤は、類の束を静かに閉じ、く息を吐いた。 息子の主張する「認症による財産散逸の危」など、どこにもしなかった。 したのは、私利私欲のために実の父親を精神異常者に仕てげようとした、浅ましい息子の捏造劇だけだった。
。野庭裁判所松本支部は、の申してを全面に却する審判をした。 『申の主張はいずれも事実に反し、被見候補者・佐伯源次郎の事理弁識能力に何ら瑕疵は認められない。よって本申てを却する』 完璧なる司法の鉄槌。 息子の卑劣な企ては、の獲物も捕らえられぬまま、自らの首を絞める罠となってね返ったのである。
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