みかん小説
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"空の米びつと一合の嘘" 第6話

まだ届かない米

千枝は勇のからを受け取り、学向け材料の業者名を指でなぞった。「この、うちの男が通う学へ乾物を納めてるとこや」。裏には、来の予定量がすでに「受渡済」とかれていた。配事務の係員はすぐを預かろうとしたが、勇は原本を渡すに内容をき写したいと求めた。「の帳面がから変えられるんやったら、このも消えるかもしれん」。周囲の線が係員に集まった。

係員は困った顔で「控えを作るのは構いません」と答えた。勇と佐野が向かいい、数量、付、押印の位置を字ずつ写し取った。フミはすぐそばで震えていた。「母さんもってたんか」と勇が聞くと、フミは「のことは初めてや」と言った。だが赤い印について尋ねられると答えに詰まった。「に度、き直した伝票を持ってこられたことがある。違いを直したと言われて、確かめへんかった」。

翌朝、のにはしい張りがされた。《当面、配取扱いを止します》。事を調べるための措置だと説されたが、列に並ぶたちには理由より今週の米の方がだった。千枝は幼い娘をおぶってへ来た。「止めるなら、どこで受け取るかを先に決めてください」。フミは役所からまだらせがないと告げるしかなかった。「それも分からんまま休めと言われたんです」

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勇はそのの仕事を休み、配事務所へ通った。窓では、別の取扱所へに移す続きにはがかかると繰り返された。待には、配帳を持った々が座っていた。戦から戻った男、夫を失った女、帰るのない族。皆、決められた類を持ってきているのに、類が揃っていないと言われて追い返される。勇は母が「来ぇへんよりなくても来る方がまし」と言った夜をいした。

夕方、千枝の夫・修平がへ来た。町で働いており、い残業で顔が悪い。「嫁が毎ここへ来てると聞いた」。勇はをげた。「のことは申し訳ありません」。修平は鳴らなかった。「謝る相はうちだけやない。でもな、りへんからいうて勝に減らしたら、そのを当てにしてたはどうなる」。静かな声だった。「あんたのお母さんが飢えてても、その話は別やろ」。勇は「その通りです」と答えた。

夜、佐野が勇を訪ねた。若い帳係は古い鞄からい伝票束をした。「私が複写した分です」。同じ、同じ、同じ運転の記録が種類あった。倉庫からた数量はつだけなのに、配送の帳面では部が「臨用」として別の業者へ移されたことになっている。「その業者へ納めたいうことですか」。佐野は首を振った。「帳面では、そういうことになってる。

でも、学から引換えの控えが来てないんです」。

「それやのに受渡済?」。勇が聞くと、佐野はうなずいた。「私、最初は事務所の計算違いやとってました。けど、毎同じ形で訂正されてる。のに聞いたら、現にをすなと言われて……」。彼は唇を噛んだ。「私も度、指示されるまま赤い印を押しました」。勇は佐野を見た。この男も何もらない被害者ではなかった。それでも話しに来た理由は何か。佐野は伏せた目をげた。「来の分まで作ってあるのを見たからです。このままやと、来も同じことになります」。

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