みかん小説
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"空の米びつと一合の嘘" 第10話

夫の名

「父さんがんでからいた類に、父さんの名がある」。勇はを指さした。付は昭の。義助がくなったのは昭のだから、本がけるはずはなかった。しかも字は確かに父の跡に似ていた。払いの癖や、最にさく点を打つ癖まで似せてある。「誰かが真似したんや」。勇はりで喉を詰まらせた。

フミは古い引きしから夫の帳面をした。義助は戦から米を営み、戦の配事務にも関わった。帳簿はきっちりしており、数の隣には必ず付があった。しい伝票にある「助」の字は、義助がの線をしくく癖まで模倣していた。フミはをねて見比べた。「この字をけるんは、昔の伝票を持ってるや」。夫の、に残した帳面の部は配事務所へ提されていた。

勇はが古い類を扱っていたことをいした。しかし偽造のはまだ分からない。部が米を抜いたことを父の署名で隠すためなのか。それとも父の代から続く別の取引を今もきているように見せるためか。正吾は「倉庫の帳では、昔の登録の名義を使って臨保管をした記録がある」と話した。「それをしいの納入分とわせたら、袋の入りが帳面だけで釣りうんや」

フミは「義助さんなら、そんなことはせん」

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と言いかけ、言葉を止めた。勇が母を見ると、フミは首を振った。「はんだら急に派になるんやない。あのも戦争は何度も難しい算段をした。でも、の受け取る米を黙って減らすのだけは嫌がった」。勇は父のことをほとんど美しいいとして覚えていた。父が帳面に汚れをつけながら、何を選んでいたのかを初めて考えた。

その夜、勇と正吾は配事務所の係員を訪ねた。夫の署名が使われていること、からき換えた疑いがあることを説し、関係する伝票の保全を求めた。係員は「調べる」と答えたが、具体な付は示さなかった。勇は用してきた写しを差しした。「ここに今の受領の印をください」。係員は戸惑ったあと、写しに付と印を押した。勇は、初めて自分の目ので印が確かに押されたのを確認した。

翌、がへ来た。客がいないことを確かめると、帳に腰をろした。「をもう度きたいんやったら、勇のを止めた方がええ」。フミは黙って聞いていた。「義助さんの名がたら、昔のことも全部調べられる。おさんはそれでええんか」。フミは「昔のこととは何です」と聞いた。はく笑った。「義助さんがに倒れる、誰の帳面を預かったか、いしてみ」

がると、フミは夫の古い帳面を冊ずついた。

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戦すぐの、義助は病に倒れるまで、以の荷の計算も頼まれていた。封筒にかれた名の部が消され、別のの名にき直されている。フミは初めて、夫がらぬうちに誰かの名義を貸していた能性を考えた。しかし考えただけで責めることはできなかった。夫ので本当にかれた記録と、の模倣を分ける必がある。

夜、弘が布団で寝息をて始めた頃、勇はの戸にっていた。父の名を使って米をかしたがいる。その証拠をせば、父自の信用まで傷つくかもしれない。勇は苦しいいで母へ言った。「お母ちゃん、父さんを守るために帳面を隠すのは、もうやめよう」。フミはく沈黙し、それから冊の分い帳面を渡した。「これが、あのが最にいた分や。私、怖うて今まで読めへんかった」

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