みかん小説
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"昭和19年、三十二人が夕飯を拒んだ理由" 第19話

の正午

昭、子どもたちはいつもと違うに本堂へ集められた。職の玄と井がラジオのそばに座り、しのは畳の端でを膝へねていた。放送は雑音が混じり、正雄には言葉のすべてを聞き取れなかった。それでも、たちの顔を見て、く続いていたものが終わろうとしているのだとじた。

放送が終わっても、誰もすぐにはちがらなかった。郁夫が「京へ帰れるの?」と聞くと、井はし考えて答えた。「帰るための準備を始められる。でも、すぐ帰れるわけではない」。子どもたちはその言葉だけで目を輝かせた者もいれば、俯いたままの者もいた。族の消息がまだ分からない子にとって、「帰る」という言葉はびだけではなかった。

正雄は午、寺の裏庭へた。の差しが段を照らし、蝉が鳴いていた。の、腹を空かせて見げた杉のが、今は青々としている。正雄は、戦争が終わったからといって、昨までのことが消えるわけではないとじた。妙子が寝込んだことも、の名が消されたことも、まだき終えていない帳面も残っている。

に入ると帰京の配がしずつんだ。井はずつ保護者の所を確かめ、帰れる子と、帰り先をさらに調べなければならない子とを分けて記した。

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正雄はそのしい名簿を見て、胸がざわついた。昨の、の名が勝に消されたと似ただったからだ。井は正雄のを察したのか、子どもたちを集めてずつ説した。

「ここにはの名がある。誰のき先も、本と族に確かめずには決めない」。井が言うと、正雄はようやく息をつけた。節子はまだ族の居所が確かめきれず、寺でしばらく待つことになっていた。しかし先は、そのことを本にもきちんと話した。「にしない。分かるまで緒に調べる」。節子は黙って頷いた。

帰京が決まった正雄は、荷物をまとめ始めた。発したの鞄は擦り切れ、もさくなっていた。だが鞄の底には事の記録帳が残っている。米の量、誰がべられなかったか、誰が根を持ってきたか。頁をめくると、最初は数字ばかりだったものが、途からの名でいっぱいになっていた。

たかは正雄の鞄を見て、「京へ帰ったら、ここのことを忘れる?」と聞いた。正雄は即答できなかった。京へ戻れば妹も父も母もいて、学もしくなるだろう。寺での腹の空き方は忘れたい。しかし、たかが自分の椀に根しか入れず座っていたことを、忘れてよいとはえなかった。「全部は覚えていられない。でも、帳面を持って帰る」。正雄が答えると、たかは静かに笑った。

別れの、玄は子どもたちを本堂へ集めた。しのはずつさな握り飯を作ってくれた。米は分ではなく、麦も混ざっている。それでもいをく子どもたちのため、所のがしずつ分けてくれたものだった。正雄は握り飯を受け取り、「しのさんの分は」と尋ねた。しのは笑った。「今はちゃんとあるよ」。

正雄はもう度確かめた。台所の端にはしのとたかの椀があり、井も皆と同じように飯を受け取っている。正雄はそこで初めて、して「いただきます」と言えた。の、皆で箸を置いたから、いが過ぎていた。べるという当たりのことを、こんなに難しく考えたはなかった。

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