みかん小説
本棚

"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第5話

「百万円払ったのよ」

玄関をけるなり、義母は私の挨拶を待たずのへ入ってきた。靴を脱ぎ散らかすようにがり込み、リビングのソファへ座ると、鞄から例のを取りした。

「親戚から話が来たわよ。孝志に何を言わせたの」

「私が言わせたわけではありません。孝志さんが、自分で訂正したんです」

「同じことよ!」

義母はをテーブルへ叩きつけた。

「あなた、自分でいてるじゃない。自分のだとって暮らせって。もませておいて、今さら私のものじゃないなんて、そんな勝な話がある?」

私はを度見ただけで、準備していたファイルをした。

「んでいいときました。でも誰かへ譲っていいとはいていません」

「同じようなものでしょう」

「違います」

のをく。そこには義父と義母の署名がある。続いての台所改修の確認を見せると、義母は瞬だけ目を泳がせた。

「こんな昔の、覚えてないわ」

「の類には、お義母さん自が『所者である黒田彩の承諾を得る』と署名しています」

義母はを閉ざした。

それでも引かなかった。

「よ。も私があのを守ってきたの。庭だって入れしたし、町内会だって全部私がた。んでるが守らなきゃ、なんて駄目になるでしょう」

広告

「切に使ってくださったことには謝しています」

「だったら――」

「でも、それと所権は別です」

義母の眉にい皺が寄った。

「固定資産税は私が払っています。きな修繕も私の確認を取ってってきました」

その、義母の目が鋭くなった。

「根よ」

「え?」

「あの根を直した、お父さんが百万円したじゃない!」

ようやく勝てる材料を見つけたという顔だった。

確かにほど、で根の傷みが見つかり、急いで規模な修理をしたことがある。事代は百万円。その際、私は期張で、務への支払い期限ににわなかったため、義父が度て替えてくれた。

義母はそこから先を語らない。

「百万円よ。当の私たちにはだった。自分たちのおでを直したの。んで、修理までして、それでも何の権利もないって言うの?」

「お義父さんが支払ったこと自体は事実です」

私が認めると、義母の表に堵が広がった。

「ほら。だったら――」

「ただし、て替えでした」

義母の笑みが止まった。

「何よ、それ」

私はファイルから古い記録を冊取りした。

「事のか、私からお義父さんへ百万円を全額返しています」

義母の顔が変わった。

「嘘よ」

「記録があります」

「そんな話、私は聞いてない!」

「今夜、孝志さんが帰ってきたら緒に確認しましょう」

義母はちがった。

「お父さんが払ったのよ!」

「はい。に」

「あなた、都のいいことばかり――」

「お義母さん」

私は初めて声をしくした。

「その百万円が、最終に誰のおだったのか。今夜、通帳を見れば分かります」

義母は私の元のファイルを凝した。

りではなかった。

らかな恐怖だった。

のが崩れ、の署名が現れ、今度は最の切り札だとっていた百万円まで消えようとしている。

そして私はまだらなかった。

義母がここまでに執着していた理由は、単なる「む所」への執着ではなかった。

その秘密を最初に打ちけるのは、夫でも義母でもない。

古希祝いの席で真っ青になっていた義弟・公平だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: