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"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第1話

発しない始発

「垣さん、あと分です。もうお客さんは乗っています」

昭、曜。覇のに営業所を置く島交通の庫では、朝のが舗装のをく照らし始めていた。い夜だった。の午から般両の通が止められ、県内のあちこちで標識や信号を切り替える作業が続いた。午を境に、はのをる。たった晩で、昨まで体に染みついていた交通の決まりが逆になったのである。

運転の垣清徳は歳。歳で運転の仕事を覚え、復帰のも、復帰の町も、同じハンドルの向こうから見てきた。きょう任されたのは午分発の丘線で、病院のあると坂のの宅を結ぶ便だった。乗がにあるしい両が配される予定だったが、夜の点検で方向指示器に具が見つかり、備員が朝まで修理しても復旧しなかった。

代わりに庫の奥から引きされたのは、昨までっていた古いバスだった。側通の代にわせ、客が側から乗りりするである。これからの側通では、いつもの留所に寄せても扉はの側にく。清徳は体の横へ回り、扉の位置をもう度確かめた。何度確かめても、扉が反対側へ移るはずがなかった。

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「このはせません」

営業所の配主任・栄吉は、にした運表を叩いた。「まさか、いまさら扉の話じゃないだろうな。乗るときだけめ方を夫すればいい。警察のも今朝は勢ている」。しかし清徳は、乗客の待つ内へ目を向けたまま首を振った。扉をいたところに続が来れば、子どもはどこへをすのか。対向線に体を置けば、今度はること自体が危険になる。

既に乗していたの客が、窓越しにこちらを見ていた。い仕事着を膝に置く女性、提げに薬の袋を詰めた老、赤ん坊を抱いた母親。みな昨から今への変化をってはいたが、目ので自分のバスが発しなくなるとはっていなかった。計の針が分を指すと、内で最初の声ががった。

「運転さん、仕事に遅れるよ。きょうだけでも何とかしてくれ!」

清徳は扉から乗り込み、運転席に腰をろさず客席の方を向いた。「申し訳ありません。こので側通の留所にお客さんをろすことはできません」。自分の声がし震えているのが分かった。勢ので運を拒んだ経験など、度もなかった。運転としての仕事は、発刻に確かに発することだと信じてきてきたのである。

最列のが窓をけた。「じいちゃん、このバスはにっちゃいけないの?」

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。清徳は、の問いにすぐ答えられなかった。のをることはできる。だが全に客を乗りりさせられない。しい交通方法は、単に線の反対側をれば済む話ではなかった。

その、ろで事務員の宮里苗が声を張った。「主任、役所から話です。丘の仮留所について、問いわせが来ています」。苗は歳で、刻表も運転の顔もほとんど覚えていた。が事務所へ戻ると、清徳は内の々にをげ、代わりの段を探すと約束した。しかし自分にも、どこからを付ければいいのか分からなかった。

庫ののでは、真しい『は』の板が朝を受けてっていた。清徳はそのにち、をるとき妻に言われた言葉をいす。「きょうは、いつもの朝だとわないでね」。そのを、勤してらずでいることになった。

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