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"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第8話

から来る

午、営業所の話は鳴りやまなかった。しい留所が分からないという問いわせ、バスが来ないという苦、昨までの所で待っていた老が通りを渡ろうとして困っているという連絡。乗客が違えたのではない。いの習慣が、たった晩で変わるはずはなかった。

苗は黒板に線名をき、赤とのチョークで連絡のあった点を区別した。赤は危険が報告された所、は単に乗る所が分からない所。ところが説を聞いているうち、で印をつけた点のにも赤へ移すべきものがあると気づいた。「どこで待てばいいか分からないは、へてバスを止めようとするかもしれない」。その言葉に清徳は頷いた。

丘のにある雑貨の主からは、「しい留所にがてない」と訴えがあった。の軒先の幅は狭く、横を通るが怖いという。方、を挟んだ向かいには広い空きがあるが、旧い通方向にう位置だ。そこへバスを寄せることはもうできない。清徳は図を広げながら、実際にで歩いて確かめる必をじた。

その、信子が営業所へ戻ってきた。タエの診察は病院側の配慮で昼へ移せることになったが、今から向かう段がない。信子は「もう今は諦めよう」

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と言った。清徳は、先ほど取りやめた別営業所からの借用がどこまで来ているか確かめた。はまだにていない。事故渋滞のためけないという連絡があったきりだった。

バスが分からず歩き回った老の話を聞くと、苗は受話器を度置いて呼吸した。相は同じ説を度繰り返していたが、っているというより怖がっていた。「昨までと同じ所にいても、今は迎えが来ないんだね」。その声をいし、苗は案内の冒を変えた。まず旧い所では待たないことを伝え、それからしい乗りへのき方をゆっくり説した。

清徳はくのタクシー会社に、信子親子を乗せられるか尋ねた。営業の配がようやくついたが、タエはそれを聞いて言った。「ほかのも困っているでしょう。母さんたちだけ乗ってもいいのかい」。信子はすぐに答えた。「お母さんが歩いてけないのは、みんな見ているよ」。清徳はタエの目を見て言った。「必なが必な乗り物を使うことまで、慮することはありません」。

タクシーのろ姿を見送り、清徳はしだけ肩の力が抜けた。バスを無理に台すより、つずつ用件を分ける方がを助けられるもある。それは運転として初めてわう奇妙な達成だった。いつもなら自分のハンドルで運ぶことだけを仕事と考えていたからだ。

だが事務所へ戻ると、また別の問題が待っていた。型バスで運の仲から、丘の坂で位置を見誤り、バスをし越えてしまったと話があった。運転は無理にバックせず、次の全な所までんでめ、客をろして歩を案内したという。乗客にはきな満が残ったが、事故にはならなかった。

「正しい判断をしても叱られるんですね」と苗が呟いた。清徳は苦笑いした。「たぶん昔からそうさ。ただ、今は誰も『いつものように』とは言えない」。彼は黒板にかれた赤い丸をつずつ見た。の向きが変わったは、運転だけがになれば済むわけではない。乗る、りる、案内する、どのにもしい仕事がまれていた。

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