みかん小説
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"夫の遺品から出た三十年目の嘘" 第6話

麻美のが、冊の古い絵本に触れた。表には、さなクマが旅をする温まるイラストが描かれている。

「父がくなった翌、歳の誕に届いたのがこの絵本でした。『麻美ちゃんへ。誕おめでとう。父さんも空から見ているよ』と、あの武骨な字でかれたが添えられていました。歳の誕には、私が寂しくないようにと、し格好なクマのぬいぐるみが届きました。歳、歳……期になって、どんなものを贈ればいいのか分からなくなったのでしょうね。あるはしびた文具セット、に入るには万、歳の成を迎えたには、さな腕計でした」

静子は、並べられた品々を震える指先で見つめた。 どれも、デパートのきらびやかな特設売りで買えるような級品ではない。 けれど、目見れば分かる。女の成を、くから見守りながら、「今は何を贈ればんでくれるだろうか」と、男が慣れな雑貨やにでを運び、汗をかきながら選んだに違いない品ばかりだった。 あの無で、付きいが苦だった健が。 自分のの枚すら静子に選ばせていたあのが、親友の娘のために、毎を悩ませてプレゼントを選んでいたのだ。

「になって就職し、暮らしを始めて所が変わっても、健さんは毎必ず探して、贈り物を届けてくれました。

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代半ば、仕事できな挫折をして、もう消えてしまいたいと泣いていた夜にも、健さんからの包が届いたんです。には温かいウールのマフラーと、『飯をって、を向け』とだけかれたカードが入っていました。私はそのマフラーを抱きしめて、声をげて泣きました。父がいなくなっても、私には健さんがいる。私の誕を覚えていてくれるが、この世界にたっただけいる。その事実が、どれほど私のを支えてくれたか分かりません」

麻美の瞳から、再び温かい涙がこぼれ落ち、テーブルに並んだいの品のに落ちた。

「父がくなって……私には、度も忘れられた誕がありませんでした。世のに誰も私のことを見ていなくても、健さんだけは、父との約束を守り、私のを祝福し続けてくださったのです」

静子の胸に、いものがこみげてきた。 界が完全に涙でぼやけ、目ののお茶の湯気さえ見えなくなった。 健のあの無骨な背がいされた。 折、休に斎に籠もり、何やらにさなメモ帳をめくっていた夫の姿。 あれは、麻美の齢を数え、今は何を贈るべきか、必に考えていただったのだ。 なぜ、私に話してくれなかったのか。 その疑問が、自然と静子のからこぼれた。

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「あのは……どうして、私に言も相談してくれなかったのでしょう。言ってくだされば、私も緒に選んだのに……お祝いしてあげられたのに……」

静子の絞りすような問いに、麻美は優しく首を横に振った。

「度、私が歳になった、健さんにをいたことがあるんです。『もう分に良くしていただきました。健さんにもご庭があるのですから、どうか奥様を切にしてください。私のことは、もう丈夫ですから』と。そうしたら、健さんから珍しくい返信が届きました」

麻美は、チェストの奥から切に保管されていた枚の便箋を取りした。 そこには、健のあの器用な跡で、こう綴られていた。

『これは、俺と真司の男同士の約束だ。 おを憫にってやっていることじゃない。真司がきていた証を、俺がこの世に繋ぎ止めるための、俺自のが儘だ。 妻には内緒にしている。静子は根の優しい女だから、このことをれば、きっと自分の遣いを削ってでもおに何かしてやろうとするだろう。自分のの計からおをさせたり、静子に余計な気遣いや荷を背負わせるわけにはいかない。 これは俺が、俺の遣いの範囲で、真司との仁義として通すことだ。 おがになってもになっても、俺がきている限り、誕は祝う。

迷惑だろうが送りつけるから、受け取り拒否だけはするな』

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