"遺体の上で眠り続けた十四年" 第5話
結婚なんてできない。、すべてを検察に告発する』と……! 私は……私は佐伯先の権力に脅され……の夜までにいたと……偽りの証言をしてしまった……! すみません……本当に、申し訳ありませんでした……!」
受話器が、老のから力なく滑り落ち、ベッドのシーツのに転がった。
しかし、その震える告は、のを超えて、完璧に塗り固められていた犯罪の分い氷を、撃で叩き割るのに分だった。
、の夜。
料理をびした神崎怜奈を追って、佐伯彰は鎌倉の別荘へと彼女を連れ戻していた。
法学部で首席を争い、正義の塊であった怜奈は、結婚の準備をめるで、彰が担当していた型倒産事件に絡む巨額の横領と、裏社会の資洗浄の証拠を偶然にも掴んでしまっていた。する婚約者が、法の番などではなく、法を私利私欲のために弄ぶ酷な犯罪者であったというかしがたい証拠を。
「自首して、彰さん。今ならまだやり直せる。あなたが自首しないなら、私が、京検の特捜部にこの資料を持ち込むわ」
別荘の居で、怜奈は自らのバッグから取りした分い証拠のフロッピーディスクと類の束を突きつけた。
彰は笑を浮かべ、彼女を宥めようとした。
「怜奈、落ち着くんだ。
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これはビジネスの過程でじた些細な処理に過ぎない。俺たちの未来のためなんだよ。結婚すれば、おもこの莫な資産の恩恵を受けるんだ」
「ふざけないで!」
怜奈は、薬指に輝くカラットのダイヤの指輪を力任せに引き抜き、テーブルのに叩きつけた。
「私はあなたの操り形にも、犯罪の共犯者にもならない! 結婚式は止よ。度と私のに現れないで!」
彼女が背を向け、玄関へと歩きそうとしたその瞬――
彰の理性の糸が、音をてて千切れた。
テーブルのにあった真鍮製のな皿を掴み、彼は無防備な怜奈の部を目掛けて、背から全力で振りろした。
鈍い打撃音と共に、怜奈の華奢な体が絨毯のに崩れ落ちた。
に散らばる鮮血。荒い息を吐きながらち尽くす彰の元で、怜奈は微かに指をかし、掠れた声で「……どうして……」と呟いた。
その瞳に宿る、侮蔑と憐憫のを見た瞬、彰は狂気に駆られて彼女の首に両をかけ、体を乗せて締めげた。
華奢な喉仏が指ので軋み、やがて、彼女の瞳からが完全に消えった。
に返った、部のには静寂だけが残されていた。
計の針は、午を回っていた。
彰は徹な脳をフル回転させ、隠蔽作を始した。
遺体をどうする。どこかに遺棄すれば、必ず発見され、自分の取りが洗われる。
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警察の捜査網は侮れない。だが、自宅の敷内であれば、宅捜索令状がない限り、誰もをすことはできない。
彼は階の畳の畳をげ、板をノコギリで切り裂き、たいのを夜通し掘りめた。
掘りされたい穴に、ビニールシートで幾にも包んだ怜奈の骸を横たえた。
その、彰は彼女のを取った。
投げ捨てられていたカラットのダイヤの指輪を拾いげ、すでにたくなり、直の始まった彼女の薬指へと、無理やり再び押し込んだのだ。
「おは俺のものだ。んでも、の誰にも渡さない。永に、俺の元で跪いていろ」
消を浴びせ、を埋め戻し、板を釘で打ち付け、そのに畳を戻した。
そして彼は、怜奈のに乗り込み、彼女のハンドバッグを助席に乗せたまま、夜けの逗子岸へと向かった。を突堤に乗り捨て、ドアをけ放ち、自殺に見せかけるための偽装を施した。
そして、その数――午分。
が激しく揺れ、阪神・淡震災が発した。
が方したと、彰はった。
警察の捜査網は麻痺し、防犯カメラのデータはび、怜奈の失踪は震災の混乱ので「入自殺」として処理された。完璧な完全犯罪が完成したはずだった。
だが、完全犯罪を成し遂げたはずの彰を待っていたのは、底れない恐怖の檻だった。
怜奈の体が埋まっているあの畳を、誰かに売ることも、に貸すこともできない。
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