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"遺体の上で眠り続けた十四年" 第6話

もし自分がこの敷を放せば、いつか解体事やリフォームがわれ、の彼女がのに晒されてしまう。

守るためには、自分がこの敷にみ続けるしかなかった。

そして、彼は自分自を罰するように、あるいは逃れられない妄執に憑りつかれたように、彼女の遺体が眠る真に寝を構えた。

毎夜、ベッドのから聞こえてくるような気がする、怜奈の爪が板を引っ掻く音。

「ここからせ」というたい囁き声。

その聴から逃れるために、彼は再婚相として従順な由里を選び、彼女を盾にするようにして同じベッドで眠らせた。

そして毎――彼女の命とされるその、彼は怜奈が最も好んでいたスコッチウイスキーを、彼女の部が埋まっている畳のへと注ぎ続けた。

それは者への供養などという易しいものではなかった。

「まだそこにいるな」「てくるな」「俺の元で永に眠っていろ」と、アルコールで霊の喉を焼き、自らの狂気を宥めるための、呪術な封印の儀式だったのだ。

、彼は自らが作りした獄の墓守として、自らの犯した罪の骸の真で、息を潜めてき続けていたのである。

成田空港の国際線到着ロビーは、夕方の帰国ラッシュで混雑していた。

自ドアを抜け、キャリーケースを引いて歩きそうとした佐伯彰のに、コートを着た数の男たちが音もなくちはだかった。

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「……なんだね、君たちは。邪魔をしないでいただきたい」

彰は眉をひそめ、いつもの傲な弁護士の調で言い放った。

しかし、央につ初老の男――、米刑事として神崎怜奈の失踪現にち会っていた神奈川県警の矢部警部補は、帳を掲げ、徹な声で告げた。

「佐伯彰さんですね。神崎怜奈さんに対する殺、並びに体遺棄の容疑で、逮捕状がています」

彰の表が瞬で凍りついた。

「な……何を言っているんだ。怜奈はに自殺したはずだ。妄言を吐くのもいい加減に――」

「鎌倉の別荘の、階のから、ご遺体が発見されました」

矢部が遮るように放ったその言葉は、彰の胸に、鋭利な杭のように突き刺さった。

「畳ののから掘りされた骨の薬指には、あの消えたはずのカラットの婚約指輪が嵌まっていましたよ。……それから、田原のホスピスにいる島孝氏が、すべてを証言しました。あなたがの夜に彼女を連れったこと、そして彼を脅迫して偽証させたことをね」

「あ……あ……」

佐伯彰の喉の奥から、乾いた空気の抜けるような、掠れた音が漏れた。 成田空港の第ターミナル、国際線到着ロビーの涼な空気は、世界から集まる々の喧騒と、旅ちや再会を祝う揚に満ちていた。案内放送を告げる澄んだチャイムの音、無数のスーツケースのキャスターがいを転がる規則な擦過音、自ドアがくたびに吹き込んでくるの夕暮れの気。

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そのすべてが、ほんの数秒まで彰が君臨していたはずの、秩序正しく清潔な常の音景だった。 だが、その完璧だった世界が、音をてて崩壊していく。目に見えない亀裂が元から井へと瞬でり、彼が代半ばにして築きげた名声、社会位、権派弁護士としての清潔な威厳、そしてにわたって完璧に塗り固めてきた虚構の壁が、砂の楼閣のようにもろくも崩落していった。

周囲をき交う旅客たちが、異様な気配を察してを止め始めていた。キャリーケースを引くが止まり、免税の袋を抱えた々が怪訝そうに眉をひそめ、巻きに彼を取り囲む。スマートフォンのカメラを向ける者、ひそひそと打ちを交わすカップル。無慮な線の針が、全方位から彰の全へと突き刺さる。 だが、彰はそれらの線に抗うことすらできなかった。彼の網膜に焼き付いていたのは、につ初老の男――神奈川県警捜査課の矢部警部補が掲げる、厳な逮捕状の片だけだった。 矢部警部補は、を完全に削ぎ落とした、能面のようにたい表を崩さなかった。

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