みかん小説
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"遺体の上で眠り続けた十四年" 第7話

、逗子岸に乗り捨てられたいをに、米刑事として途方に暮れていたあの男が、今、老獪な狩のをして彰の逃げを完全に塞いでいた。

「佐伯彰。神崎怜奈さんに対する殺、並びに体遺棄の容疑だ。弁解は署で聞く」

矢部が懐から取りしたのは、鈍いにる錠だった。 カチャリ、と質な属音がロビーのい井に反響した。たい鋼鉄の輪が、彰の細く入れされた震える両首を容赦なく締めげる。皮膚を通じて骨の髄まで染み渡るような気。それは、彼が、逃げ回り、誤魔化し、祈るようにしてざけようとしてきた現実そのものの触だった。 その音が響いた瞬――、徹な名士の仮面を被り続けてきた男の膝が、まるで糸の切れた操り形のように、ガクガクと音をてて崩れ落ちた。

「ひっ……ぐ、あ……」

空港の磨きげられた理のに、級ウールのスラックスが擦りつけられる。 膝をつき、つんいにい無様な格好で、彰は虚ろな目で宙を見つめながら、獣のような呻き声を漏らし始めた。額からは脂汗がとめどなく溢れし、えられていたロマンスグレーの髪が乱れて額に張り付く。

「……怜奈……おなのか……。おが……引きずりろしたのか……俺を……のから……いしてきて……」

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それは、誇りき法曹界のエリートが発する言葉ではなかった。獄の底から伸びてきた見えないに首を掴まれ、沼へと引きずり込まれる者の、無惨な狂乱の鳴き声だった。 だが、その呟きに答える者は、誰としていなかった。 矢部警部補は憐憫の欠片もない徹な線で見ろすのみであり、両脇を固めた屈な捜査員たちが、にへたり込む彰の腕をから乱暴に引きげ、引きずるようにして歩かせ始めた。 理のに残されたのは、男の膝が擦れたわずかな跡と、彼が握り締めていた国際権法シンポジウムの記バッジだけだった。転がったのバッジは、蛍灯の無質なを浴びて、滑稽なまでに虚しく輝いていた。

翌朝、列島を揺るがしたのは、代未聞の猟奇事件を報じる聞各の黒々とした見しだった。

『消えた令嬢、目の真実――鎌倉の別荘から骨遺体』 『エリート弁護士の狂気、遺体ので活』 『阪神震災の混乱に乗じた完全犯罪の崩壊――田原ホスピスの証言で急転』

テレビのワイドショーは朝から晩までこの事件に染まり、かつて「将来を嘱望された若敏腕弁護士」としてメディアにしていた彰の過の映像が、何度も繰り返し垂れ流された。 法学部卒、ミスキャンパスの栄冠に輝いた誰もが羨む美貌の婚約者、そして結婚式直の謎の失踪――。

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、誰もが「マリッジブルーによる劇の投自殺」だと信じ込まされていた物語は、夜にして、の毛もよだつおぞましい密の惨劇へと塗り替えられた。 世は狂と戦慄をもってこのニュースを貪った。 鎌倉の閑静な別荘、その畳ののに婚約者の遺体を埋め、その真に寝を構えて再婚相の妻とも眠り続けていたという異常性。毎の真夜、畳のに注がれ続けたという級スコッチウイスキーの奇。それらの断片な報がリークされるたび、衆は恐怖に震えながらも、底れぬ好奇の目を佐伯へと向けた。

横浜検と神奈川県警の同取調において、彰の「完全無欠の仮面」は完全に砕されていた。 逮捕から数、彼は黙秘を貫こうとしたという。だが、から掘りされた骨のDNA鑑定結果が神崎怜奈本のものであると確定し、さらに遺骨の蓋骨に鈍器による砕骨折の痕跡が認められたこと、そして田原のホスピスで息を引き取る直の元主・島孝が遺した詳細な述テープが突きつけられるに至り、彰は堰を切ったようにすべてを自供し始めた。 取調官が記した調には、常の理解を絶する歪んだ執着と、保の論理がびっしりと綴られていた。

の夜。

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