みかん小説
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"遺体の上で眠り続けた十四年" 第8話

倒産企業の資産隠蔽と巨額横領の証拠を突きつけ、自首を迫った怜奈に対し、逆した彰は真鍮のな皿で彼女の部を打した。倒れ込んだ彼女の首を絞め、息の根を止めた瞬、彼を支配したのは罪悪ではなく、「自分の輝かしいキャリアが失われる」という恐怖だけだった。 遺体をへ運びせば、検問や目撃者によって発覚するリスクがある。ならば、最も全な所はどこか――。彼が選んだのは、祖父から受け継いだ鎌倉の別荘の、滅に使わない階のだった。 畳を剥ぎ、板を切り、真夜にでたいを掘りめた。掘り起こしたの窪みに、ビニールシートで包んだ怜奈を横たえた、彼は彼女が投げ捨てていたカラットのダイヤの指輪を、直の始まった薬指へと引に嵌め直した。 「俺から逃げられるとうな。おはんでも、俺のものだ」 その言葉は、彼自の歪みきった独占欲の表れであると同に、自らの罪を正当化するための呪文だった。 そして、翌朝未の阪神・淡震災。 を揺るがした惨事は、彰にとって都の良い「の配剤」となった。社会の能が麻痺し、警察の捜査リソースが激減する、彼は怜奈のを逗子岸へ運び、自殺を偽装した。防犯カメラの映像が源障害で消失していたことも、彼の犯罪を完璧なものへと仕てげた。

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だが、完全犯罪を成し遂げた代償は、像を絶する精神の牢獄だった。 に別荘を売れば、いずれリフォームや解体でが暴かれる。に貸すこともできない。ならば、自分がみ続けるしかない。 だが、であの敷にいると、夜な夜なから怜奈の爪が板を引っ掻く音が聞こえてくるような気がした。だからこそ、彼は従順で疑うことをらない由里を妻に選び、「普通の庭」という隠れ蓑を調達したのだ。 真の寝を選んだのも、偶然ではなかった。 由里をベッドに寝かせ、自らもそので眠ることで、「から押し蓋をする」ようにして者の怨霊を封じ込めていたのだと、彰は取調で虚ろな笑いを浮かべながら語ったという。 そして、毎に畳に注がれていたウイスキー。 それは供養などという温かなものでは断じてなかった。 「喉が渇いたと、あいつがから訴えかけてくるんだ。だから酒を流し込んで、黙らせていた。アルコールで清めて、の悪霊を封印していたんだ」 法廷で理然と正義を語っていたエリート弁護士の正体は、自らの犯した血の記憶に怯え、体を踏みつけながら狂気の儀式を繰り返す、憐れで醜悪な霊に過ぎなかった。

その狂乱の報の渦からくれた所で、佐伯由里は、い底の抜けたような沈黙のにいた。

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都の賃貸マンションを引き払い、弁護士事務所の宅捜索にち会い、警察での連にわたる過酷な事聴取を終えた彼女の体は、骨と皮ばかりに痩せこけていた。 「奥さん、本当に何もらなかったんですか」 「、同じ根のにいて、に体があることに度も気付かなかったと?」 取調官たちの浴びせかける疑の差しは、由里のを容赦なくすり減らした。 当然の疑いだった。普通に考えれば、夫がを殺し、に遺体を隠し、その真でも暮らしていたなどという事実を、妻がほどもらなかったなどと信じられるはずがない。共犯ではないのか。体遺棄の隠蔽を助けしていたのではないか。 だが、由里にとってのは、らなかったからこそ成していた、底れぬ悪の連続だったのだ。

――なぜ、あのの襖はいつも固く閉ざされ、鍵がかけられていたのか。 ――なぜ、掃除をかけることすら頑なに拒まれ、夫自が「換気をする」と言ってで閉じこもっていたのか。 ――なぜ、向きのるくよい部があるのに、暗く湿気の籠もるあの部の「真」だけを、夫は頑として寝に指定したのか。 ――そして、のい夜やがりの朝、板の隙から微かに漂っていた、あの甘酸っぱい、どこかの匂いとアルコールが混ざりったような異臭は何だったのか。

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