みかん小説
本棚

"式1時間前の略奪と百八十万円" 第3話

差しされたを受け取り、震える指でいた。

それは、都内の級マンションの賃貸契約のコピーだった。借主の欄には宮宗郎の名があり、同居の欄に、見慣れたかりの直の署名が記されていた。契約は、週の付だった。

「……今受け取ってほしい荷物があるって、姉からこの所と契約が急に送られてきたんです。先輩とむはずの居とは、全然違う所でした……」

こよりの声が震え、涙が頬を伝ってに落ちた。

俺は契約を見つめたまま、喉の奥から絞りすように問うた。

「……だから、引っ越すことになっただけ、って言ったのか」

かりは観した様子もなく、腕を組んでさくを鳴らした。

「そうよ。誰とむかなんて、私の勝でしょ」

「誰と、じゃないだろ」

俺は契約の端を破れそうなほどく握りしめ、かりの目を正面から見据えた。

「活のために渡した、あの……俺の貯から渡した、百万円はどうした。いくら残ってる」

独して、昼夜を問わずを削り、削り節の散らかるでパンをかじりながら、で暮らす部の敷やのためにと渡しただった。

かりは眉を釣りげ、底だと言わんばかりに吐き捨てた。

「引っ越しっておがかかるのよ! らないの? 具だって、カーテンだって、宮さんの部にわせてしく買い直したんだから!」

広告

「俺たちの活に使うって……で決めて渡しただ!」

わず声が喉を突いてた。部の空気がビリビリと震える。

かりはたじろぐどころか、逆したようにを踏み鳴らした。

「そんな細かいこと、今ここで言う!? 私だって、あなたのにわせて今まで散々してきたのよ! 具職なんて聞こえはいいけど、結局は請けの作業員じゃない! 将来のを抱えさせられてきた私の気持ちなんて、あなた度でも考えたことあるの!?」

そのヒステリックな叫びの横から、宮がたい嘲笑を浮かべて割って入ってきた。

「返す話なら、でいいだろう。現実を受け入れろよ、野坂君。仕事も、結婚もな、腕本だけじゃ成りたないんだよ。世渡りってものをらんから、こうして全部元から崩れるんだ」

俺は唇を噛み締め、血のが広がるのをじながら拳を握り直した。

俺は、具を作る仕事をしている。

に宮のデザイン事務所から独したも、具の製作案件はほとんど宮の伝から受けていた。だが、独した途端、納期は極端に詰められ、製作費は「若いんだから実績作りだ」と買い叩かれ続けた。それでも、独したばかりのを守るため、そしてかりをさせるため、理尽な値げ求にも、徹夜続きの納品にも、度としてノーと言えなかった。

広告

断れば、すべての仕事が消えてしまうのが怖かったのだ。

その臆病な癖が、この壇に至っても、俺の喉元を縛りげていた。

「……分かりました」

俺のからた乾いた諦めの言葉に、こよりが弾かれたように顔をげた。

「先輩……!」

俺はこよりの濡れた瞳を度だけ見つめ、それから呼吸をして、姿勢を正した。背筋を伸ばし、宮とかりのを、の職として、そして契約の当事者として真っ直ぐに見据えた。

「結婚をやめることは、解しました。俺も、こんなとこれ以緒にいることはできません」

かりの顔が微かに張った。

「ですが、式のキャンセル続きも、費用の清算も、渡した費用の返還も、俺に押し付けて済む話じゃありません。今すぐ式の責任者と担当プランナーをこの部に呼びます。で揃って事を説し、違約の分担をそので決めます。そのの連絡は、すべて弁護士を通すか、記録が残る面のみにしてください」

にならず、を交えず、淡々と告げた言葉に、かりが息を呑んだ。

「な……急にそんな、みたいな言い方しないでよ!」

「今、そういう関係になったんだろう」

俺はそれ以かりを見ることなく、壁の内線話の受話器を迷わず取りげた。

駆けつけたプランナーと式の支配は、控の異様な空気を察しながらも、プロとして静にを差ししてくれた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: