"運転手は何歳?教室に響く告発" 第5話
その純粋で真っ直ぐな叫びが、健のの底に沈殿していた澱を、激しくかき乱した。
そうだ。自分は、命を救ったのだ。
あのの夜、暗ので輪が滑る恐怖に耐えながら、ペダルを踏み抜いた。のの未来と、内の乗客の命を守るために、持てる技術のすべてを注ぎ込んだのだ。
それを、会社の層部は保のために切り捨てた。学の教師は、ペーパーテストの先の論理の具として嘲笑った。
りが、静かに、しかし青い炎となって健の臓腑を駆け巡った。
このままではいけない。
息子のに刻まれたこの傷を、「算数の問題だから仕方がない」「の社会には理尽なこともある」という曖昧な妥協で片付けてはならない。
ここで自分が逃げれば、颯太は、「自分の父親は理尽に踏みにじられる側のだ」という劣等と恐怖を背負ってきていくことになる。そして何より、父親が誇りを持って命を預かってきた『バスの運転』という仕事そのものを、呪いのように記憶し続けることになってしまう。
健は、涙を拭い、息子の濡れた頬を両で包み込んだ。
「颯太。よく聞いてくれ」
父親の真剣な差しに、颯太は涙をためたまま、瞬きをして見つめ返した。
「、学の授業参観があるな」
「……うん。でも、お父さん、仕事でしょ?」
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「は、朝便と昼便のの待を調してもらった。お父さん、必ずくよ」
「え……?」
「お父さんはな、度だって自分の仕事を恥じたことはない。あのの夜のことも、度だって違っていたとったことはない。お父さんが、神崎先と、おのクラスのみんなので……本当の答えを教えてやる」
「本当の……答え?」
「そうだ。そのテストの、本当の答えだ」
健は力く頷いた。その瞳には、かつてない決のが宿っていた。
翌、健は朝の運を終えた、営業所の所のドアを叩いた。
「佐々? どうした、改まって」
所の原は、鏡の奥から怪訝そうに健を見た。
「所。折り入ってお願いがございます。昨の、番線で発した急ブレーキ事案の内ドライブレコーダーの映像記録を、示していただきたいのです」
原の顔が変わった。持っていたボールペンを机のにカチリと置く。
「……おいおい、佐々。あの件はもう示談が成して終わった話だぞ。いまさら蒸し返してどうするんだ。相はあの轟議の奥方だぞ? これ以騒ぎをきくして、からの運補助に響いたらどう責任を取るつもりだ」
「蒸し返すつもりはありません。警察に再捜査を求めるわけでも、会社を訴えるわけでもありません」
健は直のまま、原の目を真っ直ぐに見据えた。
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「息子の教育のために必なのです。私の息子が、あの事故のせいで、父親の仕事を、そしてきるを見失いかけています。ドライブレコーダーの映像は、乗務員の教育および事故分析の目であれば、本の閲覧請求が認められているはずです。規程に基づき、正式に申請いたします」
「息子の教育だと……?」
原は呆れたように息を吐いたが、健の決して引かないの鋭さに圧されたのか、やがて忌々しそうに引きしから鍵を取りした。
「……持ちしは絶対に許できんぞ。この部のモニターで確認するだけだ」
「分です。ありがとうございます」
モニターに映しされた、あの夜の映像。
暗い内。最列で毛布にくるまる颯太の姿。に煙るフロントガラスの向こうから、突然横切る黒い。
健のハンドル捌きは、映像で見ても神業にかった。型バス特の移を計算に入れ、横転の限界を見極めながらのアスファルトとの摩擦のコントロール。の乗った自転のタイヤが、フロントバンパーからわずか数センチのところで擦り抜けていく。
そして、内方カメラ。
ちがり、角泡をばして運転席へと鳴り込んでくる轟澄。その取りには、どこにもの骨折やい打撲をわせる引きずりや乱れはなかった。
ただ傲なりに任せて健を罵倒し、にをついて謝罪する健を、履いていたブーツの先で突くような仕すら記録されていた。
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