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"妊婦を狙う老人と十一月の凶刃" 第6話

涼は半歩だけに体をかわし、老の伸び切った腕の首を、容赦のない力で握り潰すように掴んだ。

骨が軋む音がした。

「ぐあああっ!」

老のがき、属のナイフがカランとアスファルトのに落ちた。涼は老の腕を背側にねじげ、そのままくの柱へと体をかけて押し付けた。逃げを失った老の頬が、たいコンクリートに押し潰される。

「せ! せ、殺し! 助けてくれぇ!!」

「騒ぐな。みっともない」

涼は老の元に唇を寄せ、曜と同じ、氷の刃のような声で囁いた。

「を刺そうとして返り討ちに遭って、助けを呼ぶのか? どこまでけないんだ、あんたは。……答えろ。あの女性と、何があった」

柱ので繰り広げられる異様な景に、巻きに通がを止め、ざわめき始めていた。誰かがスマートフォンを取りし、警察へ通報しようとしている気配がする。

そのだった。

「――お義父さん!?」

鋭く、痛な叫び声が、背から響いた。

振り返ると、数メートルれた歩ので、あの妊婦――結が、目を見いてち尽くしていた。その線は、柱に組み伏せられた老を、恐怖と絶望、そしてい嫌悪が入り混じったで見つめていた。

お義父さん。

その単語が、涼の脳内で弾けた。

老は結の声を聞いた瞬、暴れるのをやめ、喉の奥から獣のような呻き声を漏らしながら、顔を背けるようにして項垂れた。

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くの交番から駆けつけたの警察官によって、沼田義男の柄はあっけなく拘束された。銃刀法違反、および傷害未遂の現犯だった。

パトカーの赤い警告灯が、のい陽ので虚しく点滅していた。

涼と結は、警察署の暗い取調の並びにある、殺景な相談へと案内された。パイプ子に腰掛けた結のには、え切ったコップの緑茶が置かれていた。彼女の細い指先は、依然として微かに震えていた。

「……お怪はありませんでしたか」

涼がく尋ねると、結はハッとしたように顔をげ、何度もくをげた。

「はい……本当に、何とお礼を言ったらいいか……のだけでなく、今も命を救っていただいて……」

「礼には及びません。俺が勝にあの男の落とし物を見て、待ち伏せしていただけですから。……警察の聴取が始まるに、つだけ教えてくれませんか。あの男は、あなたの何なんですか」

結は唇をく噛み締め、膝ののバッグを握りしめた。い沈黙が流れた。部の換気扇が、カラカラと乾いた音をてて回っている。

やがて、彼女はぽつりぽつりと、呪われた過の糸を解きほぐすように語り始めた。

「……沼田義男は、私の元夫の、父親です」

結の旧姓は、沼田結といった。

、彼女は義男の男である沼田誠(まこと)と結婚した。

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当、義男はさな属加の町を経営していたが、製品の台と取引先の倒産により、すでに経営は破綻寸に追い込まれていた。

義男は典型な庭内暴君だった。ではよくをげる方で、庭内では妻と息子に対して絶対な従をい、に沿わないことがあれば鳴り散らし、をげた。

「夫の誠さんは、そんな父親の暴力と罵倒に怯えながら育ちました。自己肯定がく、いつも何かに怯えているようなでした。私が結婚を決めたのは、彼をあのから救いしたかったからです。でくへ逃げて、しい活を始めようと約束していました」

だが、怪物は息子を放さなかった。

結婚も、義男はの居へ昼夜を問わず鳴り込んできた。「育ててやった恩を忘れやがって」「親を捨てる気か」「おの料は誰のものだ」。の無と執拗な嫌がらせが何ヶも続いた。誠の精神は急速に摩耗し、やがて度のうつ病を発症した。

そしての、誠は会社のからびりて自ら命を絶った。遺には、ただ『父さん、許してください』とだけかれていた。

涼の胸の奥で、かつて母が遺した言葉がフラッシュバックした。『もうできませんでした』。

へと追い詰める怪物のは、いつの代も、どこの庭でも、吐き気を催すほど似通っていた。

「夫がんだ、私はすぐに婚届をし、沼田の計から籍を抜きました。

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