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"妊婦を狙う老人と十一月の凶刃" 第7話

でも、あのは私を絶対に許しませんでした。『誠がんだのはおのせいだ』『うちの跡継ぎを殺した殺し』と、毎のように話をかけてきて……私は名を変え、携帯話も解約し、くのへ引っ越したんです」

結は震えるで、自らのお腹をおしそうに撫でた。

「それから以が経って……私は今のパートナーと会いました。誠さんののから私を引っ張りしてくれた、本当に優しいです。籍を入れる準備をめていて、この子を授かりました。……でも、なぜあのが私の居所を突き止めたのか、ずっと分からなかったんです」

涼はポケットから、先ほどの老のメモを取りした。

「あの男は、最初からあなたを狙ってに乗っていたわけじゃないですね」

「……え?」

「曜の朝、のであなたと偶然くわした。あの男は、たまたまそのに乗っていて、そこに座っていたあなたが妊娠しているのを見て、逆したんじゃないですか?」

結は目を見き、それから絶望な面持ちで頷いた。

「……はい。曜の朝、私はつわりが酷くて、病院の休救急へ向かう途でした。のでふと見げたら、の両からあのが歩いてくるのが見えて……臓が止まるかといました。必でフードを被って目を閉じていたんですが、あのは私のマタニティマークを見て、気づいたんです。

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『なぜおが妊娠しているんだ』って……」

結の瞳から、粒の涙が零れ落ちた。

「あのは、私の夫……自分の息子がんだのに、私が別の男性と幸せになり、しい命を宿していることが、絶対に許せなかったんです。『沼田の血を途絶えさせた女が、の種を腹に宿して幸せになるなんてあり得ない』って……そう叫んでいました」

点と点が、恐ろしい精度で本の線に繋がっていった。

老が妊婦に向けて放った言葉。『楽をすると奇形が産まれるぞ』。

その言葉の裏に隠された、さらなるの淵を、涼は本能に察していた。単なる嫉妬や復讐だけでは説のつかない、あの言葉の異常な具体性。

「……結さん。あの男には、誠さんのに子供はいなかったんですか」

涼の問いに、結の表が凍りついた。

彼女は怯えたように周囲を見回し、声を段と潜めて、震える声で囁いた。

「……どうして、それを……」

「あの男の言葉遣いです。あれは、ので空した悪じゃない。過に実際に自分のに起きた、あるいは自分が誰かに浴びせ続けた言葉の反復だ」

結は青ざめた唇をき、沼田の最もい所に隠されていた、忌まわしい秘密を吐した。

「……誠さんのに、女の子がいたそうです。私が結婚したには、もうくなっていて、仏壇にさな位牌があるだけでした」

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その女は、度の先性脳性麻痺を患ってまれてきたという。

昭代、まだ障害者に対する社会な支援も理解も乏しかった代。町の跡継ぎとして健康な男子を望していた義男は、障害を持ってまれた娘を受け入れることができず、そのすべてのりと責任を妻へと向けた。

『おの腹が腐っていたからだ』 『妊娠に楽をして、だらけていたからこんな奇形が産まれたんだ』

義男は妻をそう罵倒し続け、毎殴打した。娘を座敷の奥に閉じ込め、親族にも所にもを隠し続けた。やがて妻は精神を完全に崩壊させ、女が歳のに、自宅の梁に縄をかけて首を吊った。

残された女は、くの奥にある施設へと預けられ、代半ばで肺炎を起こしてれず息を引き取った。

そして義男は、妻も娶らず、き残った息子の誠に狂気じみた執着と支配を注ぎ込み、最はその息子さえも自殺へと追い込んだのだ。

「あのは……」

結の声は、激しいりと嫌悪で震えていた。

「あのは、自分が族を皆殺しにしたという事実から、逃げ続けているんです。自分のせいで妻がに、娘がに、息子がんだのに、それを絶対に認めたくないから……の世界の誰かを、自分よりいのを見つけては、『おのせいだ』『おが悪い』と鳴り散らして、自分の正しさを保とうとしているんです」

部のを、沈黙が支配した。

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