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"黒い着物の女と三十台の車列" 第13話

幸恵は唇を噛み締め、涙を拭いながら声を絞りした。

「隼には……言えなかったのよ。お父さんが遺していった会社の連帯保証の借……まだ全然返し終わってなくてね。あんたに配かけたくなくて、母さん、朝から晩までパートをつ掛け持ちして……毎、利息と元をしずつ、返していたのよ……」

赤の瞳が、極限まで見かれた。

らなかった。

母親が毎、擦り切れたエプロンを着て、ボロボロになりながらで背負い続けていた、という歳のみ。自分はその苦労もらず、見栄を張ってのネックレスを買い、同窓会で偉そうに酒を煽っていたのだ。

その、蒼井が幸恵の瞳を真っ直ぐに見つめ、凛とした声で告げた。

「その借、残額のすべてを――私に引き受けさせてください」

会が静まり返った。

「あの、救っていただいた命への、恩返しをさせていただきたいのです」

幸恵は激しく首を横に振った。

「そ、そんなこと、到底受け取れません! うちの息子が、こんなにもお嬢さんを侮辱し、酷いことをしたというのに……! そんな、受け取れるはずがありません!」

蒼井は優しく、だが揺るぎない確信を込めて微笑んだ。

「だからこそです、お母様。あの、お母様が私のために差ししてくださったあの万円は、当の私にとって、全世界の富よりもく、命そのものでした」

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その――。

背に控えていた柊源郎が、な取りで幸恵のにみた。

老はにしていた黒檀の杖を静かにに置き、正座するようにして両膝を折り、両をにつけた。

そして――歳の裏社会の頂点に君臨する老が、の疲れ果てた母親に向かって、々とそのをげたのである。

息を呑む組員たち。会の誰もが、その景に言葉を失った。

「――が孫娘の命を、魂を救っていただき、より謝申しげます」

源郎の声はく、だが魂の底から震えていた。

幸恵は胸を押さえ、もはや涙を堪えることができなかった。

「そ、そんな……をげてください……! 私はただ、あの、当たりのことをしただけで……!」

源郎はゆっくりと顔をげると、にへたり込んだまま直している赤隼へと向き直った。そのは、悪を許さぬ神のように鋭く、厳しかった。

「僧。おの母親は、真に派な御仁だ。己を犠牲にしてでも、困っている者を見捨てない、気き魂を持っておられる。……その誇りき母ので、おは今、体何をしている?」

老のが、赤の鼓膜を打ち抜いた。

「て、僧。男なら、過を悔いる涙を流すに、これからのき方でその誠を示してみせろ!」

赤の喉から、獣のような嗚咽が漏れした。

彼はを叩き、子供のように声をげて泣いた。

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そして、震えるで必になってちがると、涙とにまみれた顔で、絞りすように真実を語り始めた。

「俺んち……昔からずっと貧乏で……のから、ずっと惨めで苦しかったんだ……!」

赤は胸元の擦り切れたのネックレスを、自らので引きちぎるように握りしめた。

「昼飯代もなくて、みんなが学で美そうに飯ってんのに、俺だけトイレののんで腹膨らましてたんだよ……! 貧乏だってバレて、みんなからいじめられるのがぬほど怖くて……だからグレて、良になって、虚勢張って……!」

赤は血った目を、蒼井へと向けた。

「母ちゃんが毎、倒れそうになりながら働いてんのってたのに……俺は何つ伝わねえで、自分のプライドばっかり気にして……! 今の同窓会だって、自分が落ちぶれて貧乏だってバレるのが怖くて……だから、おを標にして、自分よりのを作ってしようとしたんだ……! 俺は……俺は最のクズだ! 本当に……本当に申し訳ありませんでした!!」

赤は再び腰を折り、々と、にがつくほどにをげた。

その背は激しく波打ち、ポタポタと落ちる涙が、の理を濡らし続けた。

「母ちゃん……ごめん。本当にごめん……! そして、今まで育ててくれて……ありがとう……! 俺、変わるよ……! 絶対に変わるから! これからは、俺が命がけで母ちゃんを守れる、本物のになるから……!」

幸恵は泣きながら駆け寄り、震える息子のたくましい肩を、力いっぱい抱きしめた。

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