みかん小説
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"黒い着物の女と三十台の車列" 第14話

「隼……隼……!」

母は何度も、何度も、にまみれた息子の背を、おしそうに撫でさすった。

会にいた同級たちのくが、自らの浅ましさを恥じるように涙を流し、静かにうつむいていた。蒼井もまた、抱きう母子の姿を、温かな、慈のような差しで見つめ続けていた。

あの嵐のような同窓会の夜から、ヶのが流れた。

初の澄み切った青空の、都内にある柊組の息がかかった建設関連会社の作業ヤードには、威勢の良い掛け声との音が響き渡っていた。

がうその現で、誰よりもく勤し、誰よりもい資材を担ぎ、にまみれながら真っ直ぐに汗を流すの男の姿があった。

赤隼だった。

かつての派なグレースーツも、物ののネックレスも、そこにはなかった。く刈り込んだ黒髪に、と汗が染み込んだ青い作業着。その引き締まった肉体と、焼けした精悍な顔つきは、もはや過の卑屈な面を完全に脱ぎ捨てていた。

あるの夕暮れ、作業を終えた赤は、支度をえて柊組の事務所を訪れていた。

応接のな革張りのソファので、赤は直の姿勢をとり、向かいに座る蒼井に向かって、々とをげた。

「若……今まで、本当に申し訳ありませんでした。そして、俺のようなにやり直す会を与えてくださり、ここまで導いていただき……本当に、ありがとうございました」

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顔をげた赤の瞳は、あの同窓会の夜の濁り切ったとはまるで別のように、の青空のように澄み切っていた。

蒼井はデスクので指を組み、穏やかな微笑みを元に浮かべながら、さく頷いた。

「は、誰かに救われて、またいつか、誰かを救うことができるようになります。……あなたのお母様が、、私にそのことを教えてくださいました」

赤はその言葉を噛みしめるように目を閉じ、もう度、くをげた。

「はい! 母のためにも、恥じないき方を貫きます!」

赤は踵を返すと、迷いのない取りで事務所をていった。夕暮れののへと踏みしていくその背は、かつてないほどに真っ直ぐで、誇りく伸びていた。

け放たれた窓から、傾きかけたの柔らかな差しが、部のに静かに射し込んでいた。

蒼井はをそっと持ちげ、首に巻かれた黒檀の珠に指先を滑らせた。

滑らかな珠の温もりを通して、今もなお、祖父のあの厳格で温かい声が、胸の奥底で静かに、永に響き続けていた。

『わめかず耐える。それが器だ』

『受けた恩は、必ず返せ。それがのだ』

蒼井は静かに目を閉じ、茜に染まりゆく並みに向かって、穏やかな祈りを捧げるように、く息を吐きした。

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