みかん小説
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"出世ゴルフの朝、沈黙した妻" 第2話

画面をスクロールする真の細い指先は、微も震えていなかった。 昨晩の記憶が、鮮な映像となって脳裏に蘇る。

午を回った頃だった。俊介がリビングでクラブのフェースを入に磨いていたとき、真はを決して、俊介の母である義母・澄から届いた分い封をテーブルのに置いたのだった。 そこには、脳梗塞の遺症で軽度の介護状態となった義父の介護費用として、毎万円の仕送りを求する文言と、さらには「真さんのくなったお父様が残された世田のを処分して、俊介の将来のための資と私たちの介護付料老ホームの入居千万円を用てるのが筋でしょう」という、常軌を逸した求がびっしりと綴られていた。 真がその理尽さを訴え、夫婦としてどう対応すべきか話しいたいとにした瞬、俊介のからクリーナーの缶が投げつけられた。 缶は真の元をかすめてフローリングを凹ませ、鈍い音をてた。ちがった俊介は、般若のような形相で真の胸元を突きばした。 背を器棚に打し、息を詰まらせる真を見ろしながら、俊介は唾をばして罵声を浴びせかけたのだ。 「誰ので飯をわせてもらってるとってるんだ! たかがパートがりの女を嫁にしてやった恩を忘れやがって! 俺の昇がかかったに、実のくだらないの愚痴を聞かせる気か! 話しかけるな!」

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俊介は寝のドアを凄まじい音をてて閉め、内側から鍵をかけた。そして、追い打ちをかけるように記のメッセージを真の端末に送りつけてきたのだった。

真はスマートフォンのキーボードを静かにタップした。 文字を入力する。

『起きるだよー』

送信ボタンを押す。 画面には、のいテキストがく浮かびがった。 刻は、午分。 当然ながら、既読はつかない。部の奥からは、依然として鈍い鼾が聞こえてくるだけだった。

真は端末をテーブルのに伏せて置くと、マグカップに湯を注ぎ、丁寧にドリップした煎りの珈琲をに含んだ。 芳醇な苦と微かな酸が、乾いた喉をゆっくりと潤していく。 「話しかけるな」と、夫は言ったのだ。 対面で声をかけることも、部のドアを激しく叩くことも、夫自の厳格な命令に背く為となる。彼が定めた絶対なルールを、真は分の隙もなく遵守した。文字通り、指本触れず、声のひとひらも漏らさず、ただ械な通信ログとして「起きるだよー」と事実のみを通した。 妻として、それ以のどんな落ち度があるというのだろう。

午を回った。 遮カーテンの隙から差し込むが、から鮮やかな黄へと変わり、の喧騒がくの幹線から微かに届き始める。

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真はダイニングチェアに腰掛け、文庫本を静かに読みめていた。活字を追う線は穏やかで、折、カップにを伸ばしてめかけた珈琲をにする。 やがて、その瞬は訪れた。

午分。 静まり返っていた廊の奥、主寝から、突如として獣が喉を裂かれたような異様な呻き声が響いた。 ドスン、といういものがベッドから転落したような衝撃音。続いて、スリッパも履かずにフローリングを乱暴に引っ掻く音がバタバタとづいてくる。 バンッ、とリビングの引き戸が蝶番ごと吹きぶかのような勢いでけ放たれた。

そこにっていたのは、髪の毛を方方に逆て、目のに赤黒い隈を張り付かせた野俊介だった。 寝汗で首元が黄ばんだTシャツを着崩し、顎には無精髭が汚らしく伸びている。その充血した球は異様なきさにかれ、血った線が壁の掛け計を捉えた瞬、俊介のから言葉にならない泡が吹きした。

「な……な、なんだこれ…………!? 分……!?」 俊介は自らの髪を両で激しく掻きむしり、狂ったように叫んだ。 「嘘だろ!? なんで鳴らない! 目覚ましは!? おい、なんで俺のスマホが鳴ってないんだよ!!」 俊介はダイニングテーブルへと突し、子に座って静かに本を閉じた真の肩を乱暴に掴もうとした。

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