みかん小説
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"出世ゴルフの朝、沈黙した妻" 第4話

靴べらも使わずに革靴のかかとを踏み潰しながら、俊介は最に振り返り、憎悪に歪んだ目を真に向けた。

「覚えてろよ、真。帰ってきたらただじゃ置かないからな。おの族郎党、全員悔させてやる!!」

バダンッ!! 破壊な音をてて玄関ドアが閉まり、激しい音がの共用廊をざかっていった。 やがて、駐から俊介のであるドイツ製セダンのエンジンが、障りな排気音を轟かせて急発していく音が微かに響いた。

静寂が、再びリビングを満たした。 真はゆっくりと息を吐きし、乱れた空気のに残る夫の髪料の匂いを消すために、ベランダ側のサッシをきくけ放った。初の爽やかなが吹き込み、のカーテンをふわりと膨らませる。 真はキッチンの流し台へ向かい、自分が使ったマグカップを丁寧にスポンジで洗った。滴を拭き取り、棚の定位置へと戻す。 その付きは驚くほど優雅で、正確だった。

「さて……」 真は独りごちた。 「こちらのも、きしたわね」

真はリビングのローボードの引きしから、さな鍵を取りした。 それは、俊介が普段肌さず持ち歩いているはずの、斎の鍵だった。今朝のパニックので、俊介はデスクののキートレイに鍵の束を置き忘れてびしていったのだ。

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真の瞳に、鋭く徹なが宿った。

真はもともと、堅IT企業「ソフィア・ネットワークス」の事総務部で、労務管理と内部監査を担当していたキャリアを持っていた。労働法規や財務諸表の初歩な読解、社内の正調査に関する基礎なノウハウは、現で叩き込まれていた。 に俊介と見い結婚した際、俊介から「タチバナ設の幹部候補の妻が、で銭を稼ぐために働いているなんて世体が悪い」と執拗に迫られ、退職を余儀なくされた。しかし、庭に入ってからの、真は俊介の言に潜む数々の「違」を決して見過ごしてはいなかった。

営業職であるはずの俊介が、なぜ毎のように数万円単位の使途を私用座にプールしているのか。 宅設備という極めてコンプライアンスが厳格な業界において、なぜ俊介のもとに、特定の資材納入業者から個な額ギフトや商品券が頻繁に届くのか。 そして何より――なぜ俊介は、半から急激に「真の実の」を売却させようと躍起になり始めたのか。

真は斎のドアをけた。 窓が締め切られた狭い内には、埃とタバコの煙が染み付いた独特の淀んだ空気が漂っていた。デスクのには、ゴルフ雑誌と級計のカタログが散乱している。

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真は迷わず、デスクの最段にある鍵付きの引きしへとを伸ばした。鍵穴にキーを差し込み、へ回す。カチリと気よい属音が鳴り、引きしが滑らかにいた。

には、複数の通帳、印鑑、そして黒い革張りのバインダーが収められていた。 真は袋をはめ、慎に類を机のに並べていった。 まず目にび込んできたのは、都内のメガバンクの通帳だった。名義はいずれも「野俊介」。しかし、表をめくった真の眉が、微かにねがった。 そこには、毎決まったに、タチバナ設の主取引先である請け管材メーカー「栄管財」および「バルブ」から、「コンサルティング料」「調査費」といった名目で、万円から万円の自然な送が繰り返されていた。過における累計額は、千万円を優に超えている。

「請けからのリベート……キックバックね」 真は呟いた。宅設備業界における請法違反、およびな背任為のかぬ証拠だった。 だが、真の探索はそこでは終わらなかった。バインダーの奥から現れた、クリップで留められた束の契約類――それを見た瞬、真の背筋にたい戦慄がった。

類の表題には、こう記されていた。 『株式会社エヌ・ソリューションズ 設登記申請 控』 設は、の。

そして、その会社の代表取締役の欄に記載されていた氏名は――「野真」だった。

「……私の名?」 真の線が凍りついた。

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