みかん小説
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"出世ゴルフの朝、沈黙した妻" 第6話

「予を遥かに超えていたわ、先輩」 真は静かに、しかしえ切った声で告げた。 「私を代表取締役に仕てげたペーパーカンパニーの登記簿、請けからの千万円を超えるキックバックの裏帳簿、専務への正接待の送記録……すべて今、元のUSBに確保しました」

話の向こうの律子が、息を呑む気配がした。法廷で数々の修羅を潜り抜けてきたベテラン弁護士の空気が、瞬で戦闘モードへと切り替わる。 『……そこまで揃っているの? それ、単なる民事の貞やモラハラ婚のレベルじゃないわよ。特別背任、私文偽造、贈収賄、脱税……派な刑事事件だわ。をすれば、あなたが被疑者に仕てげられて逮捕される寸だったのよ』

「っています。だからこそ、完全に息の根を止めなければならないんです。途半端なけをかければ、私が社会に殺されていた」

『よくやったわ、真。本当に勇敢よ』 律子の声に、い賞賛と覚悟が宿った。 『すぐに私の事務所に来られる? 証拠の保全続きと、検察への告発状、それからタチバナ設のコンプライアンス統括へ提する内部告発文のドラフトを仕げましょう』

「はい。それと、律子先輩。タチバナ設のコンプライアンス統括ですが……」

『ええ、分かっているわ。神崎剛(かんざき・ごう)よね。

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私が以、社取締役を務めていた企業で監査を担当していた方よ。極めて厳格で、創業だろうと正には切容赦しない“カミソリ”の異名を持つ。彼に直接持ち込めば、社内の隠蔽作は絶対に通用しない。完璧なルートだわ』

「ありがとうございます。に事務所へ伺います」

通話を終えた真は、く用のスーツに着替えた。質なネイビーのセットアップ。かつて事の最線で企業戦士たちと対峙していた頃の、凛とした戦闘だった。 髪をろでタイトに束ね、鏡のの自分を見つめる。 そこにはもう、夫の理尽な声に怯え、義母の顔無恥な求に耐え忍んでいた「無力な妻」の姿はどこにもなかった。

真がマンションのエントランスをたのとちょうど同じ頃。 成田のに広がる「成田ロイヤルカントリークラブ」のクラブハウスには、言葉を失うような獄絵図が広がっていた。

午分。 青くれ渡ったれの、エントランスの寄せに、タイヤから焦げたゴムの匂いをちらせながら、台の黒いドイツが猛スピードで滑り込んできた。 急ブレーキのスキール音が名コースの格式い静寂を引き裂く。 から転がりてきたのは、ネクタイを歪ませ、ゴルフウェアの裾をズボンから半分はみさせた俊介だった。

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「す、すみません! キャディバッグを頼む! スタートは!? 橘専務の組はまだカートにいますか!?」 俊介は駆け寄ってきた配のマスタースタッフの肩を掴み、狂気じみた形相で叫んだ。 スタッフは眉をひそめ、ややかなつきで俊介のを払いのけた。 「お客様、落ち着いてください。本のコンペのスタートは全組午分です。すでに全組、ティーグラウンドを発されました」

「そ、そんな……! 専務は!? 橘専務の組はどこですか!?」

「橘専務の組は第組、アウトコースのトップスタートでした。分ちょうどにスタートされ、現はすでに番ホールのセカンド点にまれております」

俊介の膝から、文字通り力が抜けた。エントランスの赤絨毯のにへたり込みそうになる体を、必で壁にしがみついて支える。 「追いつく……カートをしてください! 俺は専務と同じ組で回る予定だったんだ! 今すぐ追いついて流するから!」

「無理です」 徹な声が、クラブハウスの自ドアの奥から響いた。 なブレザーにを包んだ髪交じりの紳士――タチバナ設の総務部であり、コンペの幹事を務める寺岡だった。寺岡の顔には、社交辞令の笑みすら浮かんでいなかった。あるのは、会社の名誉を塗りにされた管理職特の、酷なりだけだった。

「て、寺岡部……!」 俊介はいつくばるようにして寺岡に縋り付いた。 「申し訳ありません! 事故……首都で事故が発して完全にが封鎖され……携帯も波が届かず……!」

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