"出世ゴルフの朝、沈黙した妻" 第7話
「嘘をつくな、野」 寺岡部は懐からスマートフォンを取りし、画面を俊介の目のに突きつけた。 そこには、首都のリアルタイム交通報が表示されていた。全線、青の「順調」の表示。事故や渋滞の文字など、どこにも見当たらない。
「ひっ……」
「専務はね、君が来ないことで組みわせの変更を余儀なくされ、変なご腹だったよ。『自分の世がかかったコンペのすら守れんような無責任な男に、来期の型プロジェクトを任せられるか』とおっしゃっていた。さらに、君の代わりに急遽専務の組に入った樫くんが、見事な気配りで専務を盛りてている。君の居所は、もうあそこにはない」
寺岡の言葉は、俊介の脳を槌で叩き割るかのような衝撃を与えた。 同期のライバル、樫。普段から俊介が「あんな領の悪い奴」と見していた男が、俊介の空けた穴に綺麗に収まり、専務の寵をに浴びているというのだ。
「部、違います! 聞いてください!」 俊介は恥も聞もなく、喚き散らした。 「妻なんです! 妻が……妻が俺を陥れるために、昨夜から悪質な嫌がらせをして、目覚ましを止め、俺を起こさなかったんです! 全部あいつの仕業なんです! 俺は被害者なんです!!」
クラブハウスのロビーにいたの利用客やキャディたちが、斉に軽蔑の混じった線を俊介に向けた。
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寺岡部の額に、い軽蔑の皺が刻まれた。 「……けない男だ。自分の遅刻の責任を、こともあろうに妻のせいにして喚き散らすとはな。社会として、いや、として最だぞ、野。いいから今はもう帰れ。君の顔を見たら、専務の嫌がさらに悪くなる。、本社で話を聞くからな」
「ぶ、部! 待ってください部!!」 寺岡は俊介の叫びを背に受け流し、度も振り返ることなくクラブハウスの奥へと消えていった。
エントランスに取り残された俊介は、たいタイルのに膝をついた。 全から脂汗が吹きし、シャツが背にべったりと張り付いている。 「樫……専務……クソッ、クソッ、クソがああぁぁぁ!!」 俊介は拳をに叩きつけた。爪が割れ、血が滲む。 だが、その激しいりの切っ先は、己の怠惰や油断に向かうことは決してなかった。すべての憎悪は、黒く濁った奔流となって、自宅にいるはずの妻――野真へと向かった。
「殺してやる……あの女、絶対にタダじゃ置かない……俺のを壊しやがって……!」
俊介はふらつくでちがり、へと戻った。 エンジンを乱暴に始させ、ギアをバックに入れる。アクセルを踏み込み、成田のゴルフをびした俊介のは、再び京へと向かって狂ったようにりした。 俊介のは震え、スマートフォンの縮ダイヤルを押した。
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相は、実の母・澄だった。
『はい、俊介? どうしたの、コンペの最じゃないの? 専務さんにはうまく取り入れた?』 受話器から流れてくる呑気な母親の声に、俊介は切り声をげた。
「母さん! やられた! 全部あの女の仕業だ! 真が俺に嫌がらせをして、コンペにかせないように仕向けたんだ! 俺の世がパーになった!」
『まあっ!? なんですって!?』 澄の甲い声が、スピーカーの向こうでねがった。 『あの役たずの嫁が!? なんて恐ろしい女なの! うちの優秀な俊介のを引っ張るなんて、万に値するわ! すぐに婚よ、婚! 実のを巻きげて、銭も渡さずに追いしてやりなさい!』
「母さん、今すぐあの女に話して、絶対にから逃がさないように見張っててくれ! 俺は今から戻る! 戻ったら、あいつの目ので実のの譲渡類にサインさせて、そのまま実へ叩き返してやるからな!!」
『任せなさい! あの気な女、私がきつく締めげてやるわ!!』
母との通話を切った俊介は、速百キロを超えたセダンのハンドルを握りしめ、方のをパッシングで威嚇しながら首都へと突していった。 己の破滅が、すでに秒読みの段階に入っていることなど、ほどもらずに。
午分。 京都港区虎ノに聳えつ層オフィスビル。
その階にある「原・アソシエイツ法律事務所」の会議で、真は原律子弁護士、そしてもうの初老の紳士と向かいっていた。
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