みかん小説
本棚

"出世ゴルフの朝、沈黙した妻" 第8話

濃紺のスーツを隙なく着こなし、髪をオールバックに撫で付けた鋭い男。 タチバナ設のコンプライアンス統括、神崎剛そのであった。

テーブルのには、真がUSBメモリから力した膨な資料が、然とカテゴリー別にファイリングされて並んでいた。 神崎は老鏡の奥の目を細め、枚枚、穴がくほどに類を精査していた。資料をめくるペンの先が、折ピタリと止まる。内に響くのは、が擦れう微かな音と、エアコンの静かな稼働音だけだった。

やがて、神崎は分いファイルを閉じ、鏡をしていため息を漏らした。 「……信じ難いな。いや、噂には聞いていたが、ここまで骨かつ組織にわれていたとは」 神崎の線が、真へと向けられた。 「野真さん。あなたが持参されたこの資料……栄管財およびバルブからのリベート送記録、そしてあなたを名義としたペーパーカンパニー『エヌ・ソリューションズ』の定款および座記録。これはすべて、本物ですね?」

「はい」 真は迷いなく答えた。 「斎の庫から私が直接スキャンしたデータです。原本は現も自宅の斎のデスク最段の引きしに保管されています。また、夫のパソコン内に残されていたバックアップデータ、および請け業者との子メールの通信記録も、すべてタイムスタンプ付きで保全してあります」

広告

神崎は苦虫を噛み潰したような表で腕を組んだ。 「栄管財の取引については、社内の内部通報窓にもいくつか審なタレ込みがあり、私の方でも極秘裏に内偵をめていたところだった。しかし、営業部のトップである橘専務の庇護があるため、経理部もなかなか決定な証拠を押さえられずにいたのだ。まさか、営業第部の野課代理がその実部隊であり、自らの妻を代表者に仕てたトンネル会社を使ってマネーロンダリングをっていたとはな」

律子弁護士がを乗りし、鋭い調で畳み掛けた。 「神崎。これは単なる社内規定違反や懲戒事由に留まりません。背任罪、私文偽造・同使罪、そして組織な脱税です。さらに悪質なのは、野俊介はすべての刑事責任を妻である真さんに擦り付ける図を持って、このペーパーカンパニーを設・運用していた点です。もしこのまま放置され、国税や検察のが入っていれば、真さんは無実の罪で逮捕・起訴されていた能性が極めてい。これは種の殺未遂にも等しい背任為です」

「分かっている」 神崎は々しく頷いた。その瞳には、コンプライアンスの番としての徹な炎が宿っていた。 「タチバナ設としても、この膿は完全に絞りさねばならん。

広告

折しも、本催されている橘専務のゴルフコンペ……野はそのコンペに遅刻し、専務の逆鱗に触れたと、先ほど寺岡総務部から緊急の連絡が入ったところだ」

真の眉が、微かにいた。 神崎がく笑った。 「専務は激し、野の次昇の推薦を即座に取り消したそうだ。つまり、野は今、自らが最も頼りとしていたろ盾を、己の始末で完全に失った状態にある。橘専務も、自らのを守るために野をトカゲの尻尾切りにする腹づもりだろう。だが、この証拠がある以、専務自も無傷では済まない。会社は、緊急の臨取締役会を招集する」

その、真のバッグのでスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。 画面を見ると、着信表示には「義母・澄」の文字が躍っていた。 真は神崎と律子に線をらせた。律子がさく頷き、ボイスレコーダーの録音ボタンをテーブルので静かに押した。

真は通話をスピーカーに切り替え、話にた。 「もしもし、お義母様」

『ちょっと真さん!! あんた今どこにいるのよ!!』 スピーカーからびしてきたのは、鼓膜をつんざくような澄の切り声だった。会議の空気が瞬で凍りつく。 『俊介から全部聞いたわよ! あんた、今朝俊介を起こさずにゴルフにかせないようにしたんですってね!? なんて恐ろしい、湿な女なのかしら! 夫の世を邪魔するなんて、嫁として、として恥ずかしくないの!?』

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: