"逆ギレ夫の家出、怪奇な検針票" 第2話
数分、浩介は価なブランド物のスーツや私物を当たり次第に詰め込み、リビングへ戻ってきました。
片にはゴルフバッグを抱え、もう片方のでスーツケースのハンドルを乱暴に握りしめています。
「おい、よく聞けよ真弓!」
浩介は玄関のがり框にち、勝ち誇ったような歪んだ笑みを元に浮かべました。
「黒柱である俺がいなくなって、おら母子だけでどうやって暮らしていけるか、精々いるがいい!」
翔太と結菜は、父親の恐ろしい形相に竦みがり、私の背に隠れて震えていました。
浩介は子供たちの怯える姿を見てもに介さず、酷に吐き捨てました。
「来週にはに困り果てて、座しながら『帰ってください』って泣きつくことになるぞ! だがな、絶対に許してやらないからな!」
浩介はそう言い放つと、玄関ドアを壊さんばかりの勢いでへと蹴りけました。
バタンッ! と鼓膜を劈くような凄まじい属音が夜の宅に響き渡りました。
オートロックの鍵が無質な音をてて閉まり、階段を駆けりる音がざかっていきます。
のには、鳴りがするほどの苦しい静寂がぽっかりと残されました。
私は肩から力を抜き、のにゆっくりと膝をつきました。
背にしがみついていた結菜のさなが、私のをぎゅっとく握りしめています。
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「……お母さん」
翔太が震える声で私の顔を覗き込んできました。
その瞳には、父親に対する恐怖と、これからの活に対する底れないが渦巻いていました。
私は呼吸をつして胸の悸を鎮めると、を優しく腕のに引き寄せました。
「丈夫よ。怖がらせてしまって、本当にごめんなさいね」
私の温もりに触れた結菜の目から、ぽろぽろと粒の涙が溢れしました。
「お母さん……お父さん、もう帰ってこないの? 私たち、捨てられちゃったの?」
結菜のさな肩が、しゃくりあげるたびにさく揺れました。
私は結菜の涙を親指でそっと拭い、翔太のにを置きました。
「捨てられたんじゃないわ。あのお父さんが、自分の勝で勝にてっただけよ」
翔太は唇を噛み締め、リビングのドアを見つめました。
「でも……お父さん、いつも言ってたじゃないか。俺の料がないと、おらは飯もえないし、にもけないって」
浩介が頃から子供たちに刷り込んできた呪いの言葉が、翔太のにく突き刺さっていました。
私は翔太の真っ直ぐな瞳を見つめ返し、はっきりと首を横に振りました。
「そんなこと絶対にないわ。お母さんを信じなさい。あなたたちを困らせるようなことは、何つ起きないから」
私の毅然とした声に、はしだけ張っていた表を緩めました。
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「さあ、もう夜のを過ぎているわ。に備えて、今夜はもうおやすみなさい」
子供たちをそれぞれのベッドへと送り届け、私はでリビングへと戻ってきました。
散らかった類をえ、浩介が脱ぎ捨てていったネクタイをゴミ箱へと放り込みます。
ソファにく腰をろすと、驚くほど静かな夜が部を包み込んでいました。
いつもなら、酔した浩介がいつ起きして理尽な声をげるかと、朝まで怯えて過ごすでした。
しかし今夜は、計の秒針がむ規則な音だけが、よく響いています。
私は気を消し、ぶりくらいにいらぎので目を閉じました。
翌朝、鳥のさえずりと共に、私はふと目を覚ましました。
枕元の計を見ると、午分を指していました。
いつもなら、ちょうどに目覚ましが鳴るにび起きなければなりませんでした。
浩介の「おい、聞はまだか!」「朝のコーヒーの温度がぬるいぞ!」という鳴り声がんでくるからです。
ワイシャツの胸元にわずかでもシワがあれば、平打ちこそされないものの、舌打ちと共に罵倒されるのが常でした。
しかし、今朝の寝には、柔らかな朝のが静かに差し込んでいるだけでした。
誰も鳴らない。
誰もをを踏み鳴らして歩き回らない。
私は恐る恐る布団から起きがり、リビングへと向かいました。
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