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"八万八千円のスカーフと離婚届" 第2話

――母親のから言えば、会いたいのは当たり。が子に会うのは当然の権利。

――でも、私のから言えば、ふざけるな、だ。

今まで子育てもせず、のような苦労をすべてに押し付けて放っておいて、どの面をげて今さら母親面をしているのか。

、あの女が何をしてこのをてったか、子供たちは本当に忘れてしまったというのだろうか。

計の針をに巻き戻すとき、志津の胸にはいつも、たいのの匂いが蘇る。

当、志津は歳だった。勤めていた堅の商社で経理事務をしていた彼女は、取引先の営業担当だった佐伯雅也と会った。

雅也はそのとき、きる屍のようだった。

無精髭をやし、スーツの肩にはフケが落ち、虚ろな目をして類の受け渡しをしていた。

憫にった志津が缶コーヒーを差し入れたことがきっかけで、ぽつりぽつりと彼ののの惨な事を聞かされることになった。

雅也の当の妻――神崎恵理子は、絵に描いたような自己な女だった。

元の裕福な旧の娘として甘やかされて育ち、結婚も派な活を好んだ。

雅也のに満を漏らし、昼からブランド買い漁りとパチンコにのめり込み、やがて元の青実業を名乗る怪しげな男と倫関係に陥った。

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そしてある嵐の夜、恵理子は当学だった拓と、学だった真帆をに置きりにして、男のに乗って忽然と姿を消した。

蔵庫のには腐りかけた惣菜の残骸しかなく、気もも止められかけていた。

幼い真帆は空腹と暗の恐怖で泣き叫び、拓は泣き叫ぶ妹を抱きしめながら、漏らした自分のズボンをたいで洗っていたという。

恵理子が持ちったのは、自分の私物だけではなかった。

の庫に保管されていた子供たちの将来のための学資保険、雅也がコツコツ貯めていた定期預、さらには雅也の親戚から預かっていた事業資に至るまで、総額で千数百万円にのぼる現を根こそぎ奪いっていたのだ。

残されたのは、額の消費者融の借と、変わり果てたの子供たちだった。

志津が初めて佐伯を訪れたの景を、彼女は忘れないだろう。

のはゴミ敷のようだった。散乱したカップ麺の容器、の踏みもない洗濯物の。

リビングの隅の汚れた毛布ので、拓と真帆が寄り添うように丸まっていた。の髪は脂で汚れ、肌は荒れ果てていた。

志津が声をかけると、当歳だった拓は、まるで捨て犬が威嚇するように目を吊りげ、志津を睨みつけた。

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「誰だよ、お! てけよ! 母ちゃんが帰ってきたらられるぞ!」

そう叫ぶ拓の目には、粒の涙が溜まっていた。学の真帆は、志津の顔を見た瞬、怯えて失禁してしまった。

「……ごめんね。怖かったね。お腹、空いてるでしょう」

志津はスーツが汚れるのも構わず、たいに膝をつき、を抱きしめた。

そのから、志津の凄絶な戦いが始まった。

仕事を辞め、派遣の勤務に切り替えた。雅也と籍を入れ、正式に「母親」になった。

だが、子供たちのはい氷の塊だった。

拓は夜尿症が治らず、毎晩のようにシーツを濡らした。学では些細なことで友達に暴力を振るい、志津は毎のように学に呼びされては、見らぬ保護者にをげ続けた。「継母だからがないんじゃないの」という所のないも、数え切れないほど背に突き刺さった。

真帆は夜になると激しい夜驚症を起こし、「ママ! 私が悪いの? 私がいい子にしてないから捨てたの!?」と絶叫しながら暴れた。

志津は夜通し真帆の背をさすり続けた。

「違うよ、真帆。真帆は何も悪くないよ。好きだよ、ずっとそばにいるよ」

志津自、代の半ばに最の実母を癌でくしていた。病でにに痩せ細り、最には自分の名すら呼べなくなって逝ってしまった母。

母を失うということが、どれほど子供の魂を引き裂くか、志津は痛いほどっていた。

だからこそ、この子たちに度と「見捨てられた」

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