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"八万八千円のスカーフと離婚届" 第5話

志津は濡れたを布巾で拭き、リビングに入ってきた雅也のにった。

「……雅也さん。話があります」

雅也は志津の張った表を見るなり、うんざりしたように眉を寄せた。

「なんだよ、こんな夜遅くに。疲れてるんだよ、常務へのプレゼンもあるし」

「恵理子さんのことです」

その名をした瞬、雅也の肩がピクリとねがった。

「子供たちの様子がおかしいの、あなたも気づいているでしょう? 先の母の、拓はあの女に万円以もするスカーフを贈っていたわ。真帆も今、恵理子さんと座でランチをして、そのまま泊まるって連絡があったのよ。あの子たち、完全にあの女のペースに巻き込まれてる。このままじゃ、取り返しのつかないことになるわ」

「取り返しのつかないことって、袈裟だなあ」

雅也はネクタイを緩めながら、ソファにドサリと倒れ込んだ。

「子供たちももう成しただ。誰と会って、誰に何をプレゼントしようが、あいつらの勝だろ。志津、お、まさか母ののプレゼントの差に嫉妬してるんじゃないだろうな? みっともない真似はやめろよ」

志津のので、プツンと何かが切れる音がした。

「嫉妬……? 私が、物欲しさで言ってるとっているの!? 私がこの、どんないでを育ててきたか、あなた番くで見ていたはずでしょう! あなたが作った借を返すために、私がどれだけ自分のを削ってきたか忘れたの!?」

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「昔の話を持ちすなよ!」

雅也が突然、テーブルを激しく叩いてちがった。その目は血り、唾をばしながら志津を威嚇した。

「おはそうやって、いつも恩着せがましく『育ててやった』『借を返してやった』ってから目線で押し付けてくる! だから子供たちも息が詰まるんだよ! 恵理子はな、おみたいにガミガミ説教したりしないぞ! いつだって優しく子供たちの話を聞いて、包み込んでくれるんだ!」

志津は息を呑んだ。

部の空気が瞬にして凍りつく。

「……あなた、今、何て言ったの?」

雅也は失言に気づいたようにを噤み、気まずそうに線を逸らした。

「……別に、何でもない」

「あなた、恵理子さんと会ったのね」

志津の声は、自分でも驚くほどたく、く沈んでいた。

「いつから? どこで? まさか今のそのコロンの匂い……恵理子さんと緒にいたの?」

「違う! 会社の同僚と……」

「嘘をつかないで!」

志津は雅也の着のポケットにを伸ばした。雅也が慌てて払いのけようとしたが、志津の気迫に圧されてずさった。

着の内ポケットから滑り落ちたのは、ホテルのラウンジバーの領収と、さなのピルケースだった。ピルケースの裏には、ピンクのハートのシールと『Eriko』の文字。

志津の界が、真っ赤に染まった。

「子供たちだけじゃない……あなたまで、あの女の元へ戻っていたのね」

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「違うんだ、志津! 相談に乗ってただけだ! あいつ、宗郎さんの遺産のことで々と悩んでて……」

「言い訳はやめて!」

志津の絶叫が、静まり返ったリビングに霊した。

そのとき、階からドタドタと音が響き、階段の踊りに拓が姿を現した。

にイヤホンをつけたまま、嫌そうに眉を吊りげている。

「うるさいんだけど! 何だとってんだよ! 朝いんだから、みっともない夫婦喧嘩なんかの階でやるなよ!」

「拓……」

志津がすがるように義理の息子の顔を見げた。だが、拓の瞳に宿っていたのは、れみでも配でもなく、底れない酷さと嫌悪だった。

「志津さんさ、いい加減にしてくれない? 母さんが戻ってきてから、ずっとピリピリしてて本当にウザいんだけど」

「ウザい……? 拓、あなた、お母さんに向かって……」

「お母さん?」

拓はで笑った。笑だった。

かつて「俺のお母さんは世界で志津さんだけ」とにいて泣いていたの面は、そこには微も残っていなかった。

「血の繋がりもないくせに、いつまで母親面してんだよ。母さんが言ってたよ。、志津さんが親父と裏で示しわせて、母さんをから追いしたんだろ? 母さんが精神に追い詰められてたのを利用して、子供を奪って親父の釜に座ったんだろ!?」

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