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"八万八千円のスカーフと離婚届" 第9話

志津はそれだけ言うと、婚届をテーブルに残したまま、自分の部へと静かに戻っていった。

の澄み切った青空の、神崎の菩提寺の広には、厳粛な空気が満ちていた。

法が滞りなく終わり、本堂から寺の院へと所が移された。

座に座っていたのは、喪にを包んだ神崎恵理子だった。

化粧をし、しおらしい未のような顔を作っているが、その瞳の奥には隠しきれない欲望と興奮のがギラギラと渦巻いていた。

その隣には雅也が並び、背には拓と真帆が控えていた。

広には、神崎の本の親族たちや、宗郎のの事業関係者たちが数集まっていた。

「皆様、本は父のにご忙のお集まりいただき、誠にありがとうございます」

恵理子がハンカチを目元に当て、震える声で挨拶を述べた。

「父がくなり、しみに暮れておりましたが、こうしてき別れていたする子供たち、そして夫の雅也さんと再びつ根ので暮らすこととなりました。国の父も、きっとんでくれていることといます」

親族たちから、同と堵の溜め息が漏れた。

事を詳しくらないい親戚の老が、「おお、そうか。々あったが、最に族がつになれたのなら、宗郎さんも浮かばれるだろう」

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と頷いた。

恵理子はので舌をした。

(計画通りよ。これで親族たちも納得した。あとは遺言を示させて、子供たちに委任状をかせれば、億千万円は私のもの……!)

恵理子は満面の笑みを浮かべ、神崎の顧問弁護士である老弁護士に向かって頷いた。

「先、どうぞ、父の遺言の示をお願いいたします」

老弁護士が鞄から黒い革張りのファイルを取りそうとした、そのだった。

院の襖が、静かに、だが確固たる力でけ放たれた。

「失礼いたします」

凛とした、涼やかな声が広に響き渡った。

全員の線が斉に入りへと注がれる。

そこにっていたのは、仕ての良い漆黒の喪にを包んだ志津だった。

その隣には、分いブリーフケースを提げた倉田弁護士がピタリと従っていた。

雅也がギョッとしてちがった。

「志津……!? てめえ、本当にてきやがったのか! 部者が何の真似だ、警備員を呼ぶぞ!」

拓も顔を真っ赤にして鳴り散らした。

「ふざけんなよ! 何しに来たんだよ、目当てか!? 恥をれよ!」

恵理子は嘲るような笑を浮かべ、わざと優雅に扇子を広げた。

「あらあ、佐伯さんのところで政婦をされていた方ね? ご苦労様でした。お当ならでパパから振り込ませますから、親族の神聖な席を汚さないで、さっさと引き取ってくださる?」

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親族たちがざわめき、「誰だあの女は」「政婦が遺産目当てで乗り込んできたのか」と穏な囁きが交わされた。

しかし、志津は眉つかさなかった。

毅然とした取りで畳のを歩み、部の央、恵理子と雅也の真正面へとみた。

「神崎恵理子さん。そして、佐伯雅也さん、拓、真帆」

志津の透き通るような声が、広の隅々まで染み渡っていった。

「私は政婦としてここに来たのではありません。神崎宗郎氏から、直々に遺言執の会として指定された代理を伴って参りました」

「はあ!? 何を馬鹿なことを言ってるの!」

恵理子が甲い声をげた。

「父があなたみたいな赤のにそんなこと頼むわけないでしょう! 嘘もいい加減になさい!」

「嘘かどうかは、こちらの類を見ていただければ分かります」

倉田弁護士が歩にみて、元のブリーフケースから通の類を取りし、神崎の顧問弁護士と親族の老たちのに提示した。

顧問弁護士が鏡の位置を直し、その類に目を落とした瞬、顔を激変させた。

「こ、これは……宗郎氏がくなるヶに、公正証遺言の補として正式に公証役で作成された、『遺言執指示』および『追加信託契約』……!?」

「な、何ですって……!?」

恵理子の扇子が、バサリと畳のに落ちた。

倉田は徹な差しを恵理子に向け、通る声で宣告した。

「神崎恵理子さん。あなたが現、千万円を超える額の債務を抱え、破産寸であることは、すでにこちらの信用調査報告で完全に把握しております」

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