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"八万八千円のスカーフと離婚届" 第10話

倉田がドサリと机のに叩きつけたのは、恵理子の借リストと、業者からの催促状のコピーだった。

「なっ……な、何よそれ! でっちげよ!」

「でっちげではありません。さらに、あなたが倫相の男性と共謀し、子供たちを騙して遺産を横領しようとしていた会話の録音データも、ここにします」

倉田がスマートフォンの再ボタンを押した。

広の静寂のに、先のバーでの恵理子の声が々しく響き渡る。

『――あいつら、本当に単純で笑っちゃうわよ。「ママ、ずっと会いたかった」なんて泣いちゃってさ。万のスカーフ枚でコロッと落ちるんだから、いもんよね……あのバカどもに遺産の相続続きを全部署名させたら、すぐにお引きしてドロンするわ』

親族同から、鳴のような号ががった。

「な、何ということを……!」

「宗郎さんの遺産をい潰す気だったのか!」

拓と真帆の顔から、瞬にして血の気が引いていった。

は信じられないものを見るように、隣に座る恵理子を見つめた。

「母さん……これ、何……? 嘘だろ……? 俺たちのために会社を作ってくれるって言ったのは……?」

真帆の唇がガタガタと震え、粒の涙が零れ落ちた。

「ママ……私に買ってくれたバッグも、全部……全部嘘だったの……?」

恵理子はもはや取り繕うこともできず、鬼のような形相で叫んだ。

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「うるさいわね! あんたたちみたいなガキが、億も持てるわけないでしょうが! 親の借を肩代わりするのは子供の義務よ! 育ててもらった恩を返しなさいよ!」

「育ててなんかもらってないだろ!!」

拓が絶叫した。

「あんたはに俺たちを捨てただろ! だらけの靴を洗って、をしたときに病してくれたのは、志津さんだったんだぞ!!」

「今さら何を言ってるのよ、バカ息子が!」

恵理子は唾をばして狂ったように笑った。

「遺言にはあんたたちに遺贈するっていてあるのよ! あんたたちがサインさえすれば、おはに入るの! 弁護士、さっさと続きをめなさいよ!」

「神崎恵理子さん、見苦しいですよ」

倉田弁護士がたく遮った。

「宗郎氏が作成した公正証遺言の、第条および付言事項を読みげます」

倉田は厳かに用を広げ、朗々と読み始めた。

『――第条。女・恵理子が再び孫たちに接し、甘言を弄して遺産を搾取しようと企てた、または孫たちが恵理子の教唆により、無私のをもってを育てげた継母・佐伯志津を裏切り、排斥しようとした、本遺言における孫・拓および真帆への遺贈は、その効力を直ちに喪失するものとする』

広が、を打ったように静まり返った。

雅也が「な……何だって……!?」

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と声を擦らせた。

倉田は言葉を止めず、最の、そして最もな条項を読みげた。

『――よって、の条件が成就した、神崎宗郎の全遺産、産および産のすべては、孫たちの真の母として苦難を耐え忍び、佐伯を支え続けてくれた恩、佐伯志津氏へ包括遺贈するものとする』

院のに、静寂が落ちた。

誰として、息をすることすら忘れていた。

億千万円の全遺産が、実の娘でもなく、血の繋がった孫たちでもなく、赤のであるはずの志津に渡る。

恵理子は目を剥き、そのまま畳のに崩れ落ちた。

「嘘よ……嘘よ! 認めないわ、そんな遺言! 遺留分の減殺請求をしてやるわ!」

「無駄ですよ、神崎恵理子さん」

倉田が酷に告げた。

「あなたがに宗郎氏から騙し取った現の領収、そしてあなたが佐伯から持ち逃げした千数百万円の横領記録のすべてが、宗郎氏のによって公証役に提されています。贈与の持ち戻し計算をえば、あなたの遺留分など完全にマイナスです。円たりともに入りません」

さらに倉田は、雅也に向き直った。

「佐伯雅也さん。あなたにもご報告があります。あなたが会社の経費を私流用し、恵理子さんとの密会資に充てていた証拠を、すでにあなたの勤務先の監査に提いたしました」

雅也の顔が気に変わった。

「な……何を……!?」

「、あなたには懲戒解雇の処分がる予定です。さらに、志津先輩に対するのモラルハラスメント、および貞為に対する慰謝料として、千万円の支払いを求める訴状を京裁に提いたしました。

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