みかん小説
本棚

"二千四百万の罠と偽りの解雇" 第3話

記試験と数回の面接を経て、希望していた商業再企画部へと配属された。

そのの直属の司が、当まだ課代理の肩だった黒川俊介だった。

当の黒川さんは、もも分からないの私に対して、それなりに親切に仕事を教えてくれた。

なくとも表面は、面倒見の良い頼れる先輩司を演じていたのだとう。

私自、この仕事が決して嫌いではなかった。

現へを運んで寂れた商を歩き回ることも、してくれるテナント候補に何件もび込みで話をかけることも、しも苦にはならなかった。

半ほど経つと、しずつ難易度のい案件や、調が難航している現を任されることが増えていった。

黒川さんも最初は、私の粘りさを「若にしてはよくやっている」と素直に褒めてくれていた。

向きが決定に変わったのは、入社目を迎えた初の頃だった。

会社が、方都の駅にある古い複商業施設の再プロジェクトをコンペで勝ち取ったのだ。

い空き区画が増え続け、シャッターのようになっていた施設で、テナント構成をゼロから見直す規模な計画だった。

私はヶくの、毎現へ通って通量の調査をね、膨な提案を作成し続けた。

終を逃し、オフィスのデスクで仮眠を取るようなも珍しくはなかった。

広告

そうして提した私の提案が、全社を挙げた企画レビューで並み居るベテランを抑えて第位に選ばれたのだ。

役員会議の席、神矢会が提資料の表を見つめながら、私の名を静かににしたという。

『この再案を作った瀬さん、机の数字だけではなく、現の空気と利用者の理を実によく見ていますね』

伝え聞いたのは、ただそれだけの、い言だった。

盛な表彰式があったわけでも、特別な封がたわけでもなかった。

しかし、そのを境にして、私に対する黒川さんの態度は目に見えてえ切っていった。

最初は、常業務のでの些細な嫌や皮肉から始まった。

部内の定例会議で私がしいアイデアを提案すると、黒川さんはわざとらしく苦笑いを浮かべた。

「若いは勢いがあっていいね」

そう周囲の社員に同調を求めた、彼は必ずややかな線を私に向けて付け加えるのだ。

「でもね、実際の現は理屈や理論だけじゃ回らないから」

それ以、私に割り振られる案件は、自然なほど困難で条件の悪いものばかりになっていった。

ある駅ビルのテナント入れ替え案件では、当初予定されていた調査費用の予算を、黒川さんの独断で半分に削られた。

員の補充も切つけられず、私はで何分もの現調査をこなさざるを得なかった。

広告

耐えかねて追加の予算と員の補填を直談判すると、黒川さんは類から目をさずにたく笑った。

「瀬ならでできるだろう。会にお褒めの言葉をいただくほど優秀なんだからさ」

私は唇を噛みしめ、眠を削ってその案件を予定通りの期までにやり遂げた。

すると、役員への捗報告会議ので、黒川さんは悪びれもせずにこう報告したのだ。

「うちのチーム丸となって、迅速かつ適切に対応いたしました」

プロジェクターのを浴びるその報告資料のに、私の名はどこにも記載されていなかった。

それでも、私はじっと耐えて沈黙を守り続けた。

父が病気で界したのは、私がまだ学だった頃のことだ。

母は女つで、をにして働きながら、私を学まで卒業させてくれた。

だからこそ、私は理尽な司がいるからといって、簡単に会社を辞めるわけにはいかなかった。

刻もく仕事を覚え、誰にも文句を言わせない確固たる実績を作り、経済に自したかった。

黒川さんと正面から衝突して、せっかくに入れたキャリアと活の基盤をすべて棒に振る勇気もなかった。

だが、ただ耐えて黙っているだけでは、いずれ破滅させられるのだと痛させられた決定な事件が起きた。

、私が担当していた商業施設のフロア改装案件で、事の幅な遅延が発した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: