"二千四百万の罠と偽りの解雇" 第6話
社内で彼女の顔をらない管理職はしない。
藤森さんは内にを踏み入れると、まず私に向かってさく、丁寧に会釈をした。
それから線を黒川部へと転じ、氷のように研ぎ澄まされた声で問いかけた。
「黒川部、この瀬さんの解雇通は、部の独断による判断ですか」
黒川部は喉を鳴らし、わずかに呼吸置いてから答えた。
「……部内で慎に事実関係を確認したでの決定です」
「最終な承認者は誰ですか」
「私です」
「解雇理由として『な報管理違反』と記載されていますが、具体にどのような正事実があったのですか」
「それは……部内の調査資料を確認していただければ……」
「今、こので、で説できないのですか?」
藤森さんの鋭い追及に、黒川部は助けを求めるように佐伯部を見た。
しかし、事のさを察した佐伯部は、固くを閉ざしたまま線を逸らした。
藤森さんはさらに淡々と言葉をねた。
「解雇予告にあたり、事の面による警告はされていますか?」
「……そこまでは、まだ……」
「本への弁の会の付与、および詳細な事聴取はいましたか?」
黒川部は完全に言葉に詰まり、答えられなかった。
藤森さんはテーブルのに置かれていた解雇通を指先で引き寄せ、静かに閉じた。
「分かりました。この解雇続きは、直ちに旦止してください」
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黒川部が弾かれたようにちがった。
「藤森! これは現の事権に基づく正当な判断です!」
「ですから、その判断の正当性を確認すると申しげているのです」
「平社員の退問題に、会がいちいちを挟むというのですか!」
黒川部の激昂にも、藤森さんの表は微だにしなかった。
「会からの直接の指示です」
その言で、すべての議論は完全に打ち切られた。
藤森さんは私に向き直り、穏やかなトーンで言った。
「瀬さん、しおをいただけますか」
「はい」
私はスマートフォンの録音を止して保し、バッグをに取って藤森さんのに続いて部をた。
エレベーターに乗り込み、最階の役員フロアへとがっていく。
密のできりになっても、藤森さんは私なを切交えず、淡々と仕事の確認だけをった。
案内されたのは、役員フロアの奥にあるさな応接だった。
藤森さんは革張りのソファに腰をろすと、元のバインダーをいた。
「最初から、客観な事実のみを確認します。黒川部とので問題がじたのは、今回の解雇が初めてではありませんね」
私はく息を吸い込み、順を追って事実を話し始めた。
な愚痴にならないよう、系列と来事だけを理して伝えた。
入社目の全社レビューで評価されて以、理尽に仕事を押し付けられるようになったこと。
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の改装案件で、施会社の遅延責任を私の仕様変更のせいに議事録改ざんされたこと。
社内プロジェクト責任者の公募選考から、当な理由で除されたこと。
そして昨夜、ヶチームを率いて作りげた関内リバーサイド再計画の提案から、私の名を黒川部の名にき換えられ、理由をメールで求めたところ今朝の解雇通告に至ったこと。
藤森さんはメモを取りながら、所所でく質問を挟んできた。
「改ざんされるの議事録の元データは残っていますか?」
「はい、あります。当の関係者とのメール履歴も保しています」
「提案の変更履歴は?」
「クラウドのバージョン履歴に残っています。変更のPDFも元に保管してあります」
「先ほどの録音のにも、記録はありますか?」
「すべてではありませんが、な指示を受けた会議の音声データは残してあります」
私はスマートフォンを操作し、付ごとにフォルダ分けされたいくつかのファイルを表示して見せた。
藤森さんは画面に表示されたタイムスタンプとファイル名を素く確認したが、袈裟に驚くような素振りは見せなかった。
「これらのデータのコピーを、秘でお預かりしてもよろしいですか」
「はい、構いません」
データの転送が終わると、藤森さんは帳を静かに閉じた。
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