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"母の葬儀を拒んだ叔父と、消えた教育資金350万円" 第16話

「社、藤崎正尾様がおでお見えになっております。アポイントはございませんがどうしてもお会いしたいとのことです」

の沈黙と嘘を抱え続けた老いた叔父が、自ら私のに現れようとしていました。私は社の内線話越しに受付へ静かに指示をしました。

「番奥のさな応接へご案内してください。すぐに向かいます」

受話器を置き、私は呼吸をつして席をちました。

案内された応接の扉を静かにけると、以のような圧な気配は部のどこにもありませんでした。

テーブルの央に腰をろしていた正尾叔父は背をさく丸め、膝のに両を揃えて置いていました。仕ての良いスーツもどこか体に余っているように見え、く刻まれた眉のシワと髪の混じった髪が、という過酷なみを物語っていました。

「おじさん、お待たせいたしました」

私が正面の革張りの子に腰をろすと、叔父はびくりと肩をねげ恐る恐る線をげました。

かつて本の座敷で私を鳴りつけたあのの鋭さは消え失せ、濁った瞳にはい疲労と戸惑いだけが浮かんでいました。

「忙しいところすまんな。アポも取らずに押しかけて」

掠れた声でした。横柄な調子を取り繕う余裕すら失った叔父の姿に、私はを乱すことなくただ静かに言葉を待ちました。

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部のに壁掛け計の針が刻む定のリズムだけがく響いていました。

い沈黙の、叔父は両で顔を覆うようにしてく息を吐きしました。

「悪かった」

ぽつりと落ちたその言は、あまりにもくあまりにも遅すぎる謝罪でした。

「優から類を見せられた。納戸の茶箱にあったものを全部突きつけられたよ」

叔父は顔を覆っていたをろし、力なくうなだれました。

「おの親父が残した教育資のこと。それからえみこさんが毎親父とお袋に仕送りをしてくれていたこと、全部本当だ。俺が嘘をついていた」

親族全体を欺き、者への汚名によって守り続けてきた自らの虚飾を、叔父は初めて自ので認めました。

「あの頃の俺は本当に追い詰められていたんだ」

叔父は絞りすように当の内を語り始めました。バブル崩壊の余波と公共事業の削減により、建築資材加の資繰りは毎のように逼迫していました。

追い打ちをかけるように祖父が脳梗塞で倒れ、期の入院活と度医療費がくのしかかりました。の融資枠は限界で、末の形を落とせなければそので倒産という瀬戸際だったと言います。

「弟がくなって、俺で本の板と親父の命と数の従業員の活を背負わされたようにじていたんだ」

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叔父は震える指先で膝の布をく握りしめました。

「そんな、弟がまほのために残した積のをいした。に借りるだけのつもりだったんだ。会社をて直したらまほが学に入るまでに必ず全額を戻すつもりだった。だが業績は向に向かず、戻すどころか穴は広がる方だった」

そして迎えたの。母が急し、歳の私がで本の座敷へ助けを求めに来たあのの真相を、叔父は目を伏せたまま語りました。

「あの朝おが本の敷居を跨いで畳に膝をついた、俺は恐怖でがすくんでいたんだ。もしおを受け入れれば教育資のことを親戚にられてしまう。弟のを使い込んだ棒だと罵られ、本の男としてのを失うのが怖くてたまらなかった」

自己保の恐怖から逃れるため、叔父はまほを酷に突き放すを選びました。

「だから俺は先を打ってえみこさんを悪者に仕てげた。保険を持って逃げたな女だと親戚に吹き込み、自分たちのたさを正当化しようとした。おたちを悪者にしなければ俺自のが保てなかったんだ」

叔父の告を、私は遮ることなく最まで聞き届けました。

りや憎しみが燃えがることはありませんでした。目のにいるのはかつて恐ろしかった絶対な権力者ではなく、自らのさと保にみ込まれ嘘をねて自滅していったれなの老に過ぎませんでした。

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