"橋の下で見つけた孫" 第4話
「パパ、どこくの? きたくないよ」
けれど、ゆかりは美咲に目もくれず、を剣太へ渡していた。
数分、3はをた。
ドアが閉まる直、美咲はきな瞳で里子を振り返った。
けれど、ゆかりがそのをく引き、孫の姿はのへ消えていった。
その、里子は幽霊のようにきた。
剣太に話をかけてもない。メッセージを送っても返信はない。きそうな所を尋ね回ったが、誰もらなかった。
そして数週、ゆかりから届いたメッセージが、里子にとどめを刺した。
「もう連絡してこないでください。私たちはオーストラリアに移します。剣太も、あなたのような母親はもういらないと言っています。私たちのことは忘れてください」
里子はその文面を何度も読み返した。
携帯話がから滑り落ち、に転がった。
その、里子は本気で信じた。
自分は、たった1の息子を永に失ったのだと。
のの湿った匂いが、里子を現実へ引き戻した。
目のには剣太がいる。美咲がいる。
そして、真実を語るが来ていた。
里子はハンドバッグからのペットボトルと、先ほど美咲のために買ったクリームパンを取りした。
「剣太、べなさい。美咲のためにも、あなたがしっかりしなくちゃ」
剣太は震えるでパンを受け取った。その指は節くれち、埃にまみれている。
広告
彼はパンをさくちぎり、ゆっくりへ運んだ。
それを見ていた美咲が、里子の元でそっと言った。
「おばあちゃん、パパね、パンはあんまり好きじゃないの。いつも美咲のために取っておくんだって言うの」
無邪気な言葉が、里子の臓を刺した。
里子は涙をこらえながら、美咲のを握った。
「ってるわ。でも今はパパにも力をつけてもらわないと。緒におへ帰るためにね」
里子は剣太を見た。
「ゆかりさんは、オーストラリアへったんじゃなかったの? あなたはもう私のことなんかどうでもいいって……どうして、こんなことになったの?」
剣太は顔を伏せた。ののパンを握りしめ、勇気を振り絞るように息を吸う。
「母さんの言う通りだったんだ」
かすれた声で、彼は語り始めた。
「計画では、オーストラリアへくはずだった。ゆかりが言うには、向こうに建設関係の仕事をしている古い友がいて、俺たちにいい仕事としい活を用してくれるって。俺はそれを信じた。美咲にもっといい未来を与えられるとったんだ」
剣太は度言葉を切り、く息を吸った。
「続きをくめるためだって言って、ゆかりはのような類にサインをさせた。使館とのやり取りに必だとか、経済な信用を示すためだとか、もっともらしい理由をつけて。
広告
俺はをよく読みもしなかった。母さん、俺はあいつをの底から信じていたんだ」
里子の胸にりが押し寄せた。
けれど、それは剣太に対してではなかった。ゆかりの面性に、もっとく気づくべきだった自分自へのりでもあった。
「それで?」
里子は震える声で尋ねた。
剣太は目を伏せたまま続けた。
「貯を全部ろした。2で買ったも売った。そのを全部ゆかりに渡した。類、航空券、向こうでの初期費用に必だって言われて。全部、族のためだとってた」
彼は乾いた笑いを漏らした。
「でもフライトの1週、裁判所から通が届いた。ゆかりが婚を申してていたんだ。類には、俺がゆかりと美咲に暴力を振るっていたってかれていた」
「暴力? あなたが?」
里子は息をんだ。
剣太が美咲にをげるなど、ありえなかった。
美咲が里子の腕にしがみついた。
「パパはママを叩いたりしてないよ。おばあちゃん。パパは1度もそんなことしてない」
里子は美咲をく抱きしめた。
「分かってるわ。あなたのお父さんは優しいよ」
剣太は声を震わせた。
「弁護士を雇うもなかった。財産は全部ゆかりの名義になっていた。裁判官はあいつの言い分を認めた。それでも俺は、馬鹿みたいに信じてたんだ。これもオーストラリアへくための続きだって。
でちゃんと説してくれるって」
剣太は両でを抱えた。
「フライト当、あいつは笑顔だった。俺と美咲を空港に連れてって、『チェックインしてくるからここで待ってて』って言った。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
「死産」と告げた院長と20年目の出生記録
20年前、出産した娘を「死産でした」と告げられた私・佐藤しず子。しかし私は、麻酔の中で確かに聞いた産声を一度も忘れられなかった。 真実を確かめるため、私は清英産婦人科医院の清掃員として20年間働き続け、誰にも気づかれず院内の秘密を探ってきた。そんなある夜、若い看護師から「まだ間に合います。あなたの娘さん生きています」と書かれた紙を渡される。 やがて地下の保管庫へ忍び込んだ私は、自分の出産記録の隣に「佐藤女児――転送」と記された手帳を発見する。 さらにそこには複数の新生児と金銭の記録まで残されていた。娘を奪ったのは誰なのか。そして病院は20年間、何を隠してきたのか。見下され続けた“掃除婦”は、集めた証拠を手に院長・安藤剛と対峙する――。真相|修羅場2.1万字5 407 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 199 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88