"レモングラスの下の悪臭" 第3話
らない医者が来てあれこれ聞けば、母さんが驚いてしまう」
「でも……」
「僕は母さんに、これ以ストレスを与えたくないんだ」
正しい言葉に聞こえた。けれど、するどころか、息が詰まった。
ある昼がり、私は洗濯物を持って義母の部のを通った。ドアがしいていた。では裕さんがベッドの横に座り、きな薬瓶からさなガラス瓶へいを慎に移していた。
その作は、まるでグラム単位で測っているように正確だった。
私がづくと、彼は反射に盆を内側へ回し、薬を隠した。
「何か伝うことはない?」
私が尋ねると、彼はすぐに微笑んだ。
「丈夫。母さんの漢方薬だよ。末タイプで、量を正確に守らないといけないんだ」
私は頷いたが、そのからのにたな疑問がまれた。
普通の栄養剤なら、なぜあそこまで慎に扱うのだろう。
そのも表面は穏やかだった。私は事を作り、裕さんは義母の世話をした。誰かが見れば、「本当に恵まれたね」と言うだろう。
けれど、見た目だけで真実は分からない。
ある夜の11頃、私は忘れ物を取りに2階へがった。義母の部のを通ると、から苦しそうな息遣いが聞こえた。
く、途切れ途切れの音。いびきではなかった。
私はドアをけた。柔らかなスタンドのかりので、佳さんは横向きに寝ていた。
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髪が額に張りつき、布団のに置かれた指は丸まっている。アロマディフューザーはまだいていた。部は相変わらず清潔で、レモングラスのりがした。
けれどその清潔さが、かえって私をぞっとさせた。
この部は病を病するためではなく、何かを隠すために毎えられているのではないか。
その考えがよぎった瞬、私は自分の疑いを責めた。
それでも、その夜、夫の隣で横になっても眠ることはできなかった。
曜の朝、裕さんは会議があると言ってくをた。お伝いさんも6過ぎに買い物へかけ、には私と佳さんだけが残された。
私は会社に1遅れて勤すると連絡し、義母のために鶏ひき肉入りのお粥を煮た。続きのの朝のは柔らかく、台所のタイルを黄に照らしていた。けれど私のはしもれなかった。
お粥を器に盛り、2階へがる。部のドアをけた瞬、私はそのにち尽くした。
佳さんはベッドの端に腰かけていた。背はいつもより丸く、の髪が片側に流れている。顔はどす黒く疲れ切っていた。今はあの匂いがひどかった。アロマのりを突き破るように、酸っぱく臭い匂いが部に漂っていた。
「佳さん、温かいうちにどうぞ」
私がづくと、彼女は何度も瞬きをした。
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「さやかだな」
「はい、私です」
私は彼女の背を支え、座り直させた。寝巻き越しにじる体は、骨だけのように軽かった。急に胸が痛んだ。
佳さんは数しかべられなかった。が震え、元に運んだお粥はタオルにこぼれ落ちた。
私は襟元に汗が滲んでいるのを見て、優しく言った。
「佳さん、着替えて、簡単に体を流しましょう。しはさっぱりしますよ」
その瞬、佳さんの目がきくいた。痩せた両が布団の端をぎゅっと握る。
「嫌だ。丈夫だ」
「何をおっしゃっているんですか。今朝は私たち2だけですよ」
私はさせようと笑った。
「母と娘ので、何を恥ずかしがることがあるんですか」
佳さんはい、私を見つめていた。目の奥には、何かを言いたいのに言葉にならない、切迫したがあった。やがて、私に支えられてちがった。
浴までの数歩が、恐ろしくくじた。彼女はを引きずり、ほとんど私に体を預けていた。
浴で寝巻きのボタンをし、袖をまくった瞬、臓が止まるかとった。
義母の腕には、のひらほどのきさの痣がいくつもあった。黄く変した古い痣、縁がはっきりしたどす黒い痣。反対側の腕も同じだった。誰かがく掴んだにできる所に、対称に痣が残っていた。
「佳さん……誰がこんなことを」
私が震える声で尋ねると、彼女は慌てて袖をろした。
「違う。転んだんだ。昨の夜、トイレにこうとして」
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