"退職金より重い家計簿" 第4話
娘の学費。
急な医療費。
の修繕費。
隆の付きいの費。
検代。
冠婚葬祭の費用。
それらの横に、麻美が補った額がさな字でかれていた。
隆の指が、計簿ので止まった。
「こんなもの……」
言い返そうとしたのだろう。
けれど、数字は隆の言葉を受け付けなかった。
麻美は静かに言った。
「私はあなたを責めたいわけではありません。ただ、“俺で稼いだ、俺で守った”という言葉だけは違うと、分かってほしいんです」
隆は顔をげた。
「だからって、退職までをす気か」
「をすんじゃありません。夫婦の老として話しいたいだけです」
「俺が稼いだだ」
「それは否定しません。でも、その、を守ってきたのは誰ですか。あなたがして働けるように、活を回してきたのは誰ですか」
隆は黙った。
麻美は初めて、隆が言葉を失う姿を見た。
それは勝利ではなかった。
むしろ、胸の奥には寂しさが広がった。
40も緒にいたのに、こんな類を並べなければ、自分のを認めてもらえないのか。
麻美は類をえ、茶の封筒に戻した。
「隆さん、私はもう、あなたの顔をうかがって暮らすつもりはありません」
隆は何かを言いかけたが、結局言葉にできなかった。
そのの話しいは、たい沈黙のまま終わった。
隆は類のコピーを持ち、自宅へ帰っていった。
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麻美は玄関先でその背を見送りながら、静かにった。
このは、初めて自分がっている所を疑い始めたのかもしれない。
隆は類のコピーを持ったまま、自宅に戻った。
玄関に入ると、いつものように靴を脱ぎ散らかした。けれど、その瞬、元の景が以とは違って見えた。
このは自分のだとっていた。
会社で疲れ、酒をみ、帰れば温かい飯がてくる所。自分が働いているから成りっている。隆はい、そう信じていた。
けれど類には、所者として麻美の名があった。
「ふざけるな。俺が何も帰ってきただぞ」
隆はリビングに入り、ソファに乱暴に座った。
しかし、部は静かだった。
夕飯の匂いはしない。
洗濯物も畳まれていない。
テーブルのには、昨の郵便物がそのまま置かれている。
麻美がいないだけで、は急にただの箱のようになっていた。
夜、隆は麻美に話をかけた。
「麻美。あののことは度置いて話そう。俺がむなんだから、今まで通りでいいだろう」
麻美の声は落ち着いていた。
「今まで通りにはできません」
「なんでだ。俺は夫だぞ」
「その夫が私に、“俺のに触るな”と言いました。だから私も、私の名義のを守ります」
隆はしばらく黙った。
「じゃあ、俺にていけって言うのか」
「み続けるなら、固定資産税と修繕費、費をきちんと負担してください。
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それから、私の許なくの類や座を探らないこと」
「賃を払えってことか。夫に向かって」
「あなたは私に、活費は許制だと言いました」
話の向こうで、隆が息をのむのが分かった。
自分の言葉が返ってくると、はたいてい嫌になる。
隆も同じだった。
「俺は、そんなつもりで言ったんじゃない」
「私は、そんなつもりで40支えてきたわけではありません」
麻美の声は震えていなかった。
隆は何も言えなくなった。
数、隆は自宅をた。
固定資産税や修繕費を負担する気も、麻美にをげる覚悟もなかったのだ。
「しれるだけだ。俺は負けたわけじゃない」
そう言い残したと、で所のから聞いた。
玄関には、隆が使っていた会社の鍵だけが残されていた。もう必のない鍵だった。
麻美はそのらせを聞いた、湯呑みを両で包んでいた。
勝った気はしなかった。
ただ、もう踏みにじられない所を取り戻しただけだった。
自宅へ戻ると、のはし荒れていた。
隆が探し物をした跡が残り、引きしのは乱れていた。麻美はつずつ片づけた。
片づけながら、涙はなかった。
代わりに、部の空気がしずつ澄んでいくような気がした。
このは、誰かの鳴り声に支配される所ではない。
自分の活を取り戻す所なのだと、麻美は改めてった。
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