"42人が消えた渚" 第4話
この町全体が、27のあの事件に分いコンクリートの蓋をして、見ないふりをしてきているかのようだった。
さち子は最の望みをかけ、漁師町の角にひっそりと佇む、塩でゴツゴツと化した造ののにった。アルバムの端に写っていた・良太のだ。
彼女が製の引き戸をトントンと叩くと、きしむ音をててゆっくりと扉がいた。から顔をしたのは、に焼けていシワが顔全体に刻まれた、老いた漁師の男性だった。その太く節くれったは、彼がこれまでので、どれほど過酷なと戦い、しみを握りしめてきたかを無言で物語っているようだった。
さち子は無言で、持参したアルバムの例の集写真を男性のに差しした。老漁師は、その写真に目を落とした瞬、度だけ苦しげに顔を歪めた。そして、すべてを諦めたかのように、胸の奥からい、いため息をついた。
「今更、何をりたいんだ……」
男の声は、掠れてく、波の音に消されそうなほどだった。
「この写真の、息子の隣の子たちの顔に、まるで印のような黒いシミが浮かびがってきたんです。何か当たりは……」
さち子が必に説しようとすると、男はそれを遮るように、静かに、しかし断固として首を振った。
「印だ? そんなもんは関係ねえ」
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男は古い引き戸の枠にをかけたまま、い平線の彼方を見つめるような虚ろな目で、ぽつりと言いした。
「あの子らは、の神さんに呼ばれただけだ。それ以でも、それ以でもねえ。わしらはそうやって、すべてを諦めてきてきたんだ。あんたも、もう忘れろ。それが……あの子らのためでもある」
「の神さん」というその言葉は、単なる田舎の噂話や迷信として片付けるには、あまりにもく、奇妙な確信に満ちていた。それは、の諦めの言葉でありながら、同に、には決して抗うことのできない絶対な何かへの、い恐怖と畏怖のが込められているようだった。
さち子はそれ以、何も言い返すことができなかった。この男が背負ってきた27分の底れないしみと、その奥に隠された、決して部者には語られることのないであろう秘密のさに圧倒され、ただ玄関先でち尽くすしかなかった。
帰り、1で寂しいバスに向かいながら、さち子はに濁ったを見つめた。寄せては返す単調な波の音が、自分の無力さを嘲笑っているかのようにえた。なぜ皆、様にを閉ざすのか。同じ痛みを抱えているはずなのに、なぜ自分だけがこんなにも孤独なのか。吹き付けるたい潮が、さち子の頬を伝う静かな涙を、すぐにく乾かしていった。
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町の々や被害者族たちからの容赦ない拒絶は、さち子のにたくいを落とした。だが、ここでち止まるわけにはいかなかった。
彼女は自宅に戻ると、最の望みを託し、震えるで古い話帳のページをめくった。そして、当の勇気の担任教師だった、今井先の連絡先をようやく探しした。話をかけると、受話器の向こうから聞こえてきたのは、かつての記憶にあるよりもずっと々しく、老いた男の声だった。事を話すと、先が再会の所に指定したのは、あの丘のにポツンとつ、すでに廃となった彼らの母の舎だった。
数、さち子はバスをり、錆びついた古いをくぐった。夕暮れの古い造舎は、寂しげな燃えるようなオレンジのに包まれていた。くのガラスが割れた窓、蔦が容赦なく絡まる壁。それでも、この所には、勇気やあの42の子供たちの賑やかな笑い声が、今も建物の目に染みついているかのようにじられた。
裕子は古い引き戸をガラガラとけて舎内に入った。その瞬、カビと埃、そして古い材が混じりった、懐かしい舎の匂いがさち子のをくすぐった。しんと静まり返ったい廊に、自分の音だけが虚しく反響して響く。
指定された2階の教のドアをけると、窓際の席に、髪の老が1ぽつんと座っていた。
背から夕を浴びているため、その表はいになってよく見えない。
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