"消された両親の席" 第7話
私が静かに尋ねると、夫はを見たまま穏やかに答えました。
「あの子は、切なことを学ぶ必があった」
「を見た目や肩きで判断してはいけない、ということですね」
「そうだ。そして、本当に切なものは何か、いつか分かるが来るだろう」
私はさく頷きました。
私たちのは、方の静かな所にあります。
豪邸というわけではありません。
けれど、広い庭があり、があり、私たちにとって切な所でした。
に着いても、スマートフォンは鳴り続けていました。
着信履歴には、何件もの通が並んでいました。
メッセージも届いていました。
けれど、私はきませんでした。
貴も同じように、話にはませんでした。
数。
私はで静かに陶芸をしていました。
轆轤を回し、に触れるこのが、私は番好きです。
の触は、を落ち着かせてくれます。
形を作り、削り、える。
ひとつひとつの作業に向きっていると、ざわついたもしずつ静かになっていきます。
庭では、貴が読をしていました。
の差しがやわらかくり注ぐ、穏やかな午でした。
そこへ、の話が鳴りました。
取り次ぎをしてくれている秘の田さんからでした。
「奥様、健太郎様から、またお話が……」
「そうですか」
私は静かに答えました。
を止めることなく、作品に向きい続けます。
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「まだ、お取り次ぎしなくて結構です」
「かしこまりました」
田さんの声は、どこか配そうでした。
きっと、健太郎の様子が尋常ではないのでしょう。
でも、今は会えません。
今すぐ会ってしまえば、きっと健太郎はそのを取り繕うためだけに謝るでしょう。
私たちが聞きたいのは、そんな謝罪ではありません。
からの反省でした。
をこねながら、幼い頃の健太郎をいしました。
さなで、私の作った茶碗を事そうに持っていたこと。
「母さんの作るお茶碗、好き」
そう言って笑っていた顔。
あの頃の優しさは、どこへってしまったのでしょう。
そのの夕の席で、貴が静かに言いました。
「健太郎から、また話があった」
「ええ。私のところにも」
お互いのスマートフォンには、まだ着信通が残っていました。
貴は噌汁の椀を置き、ゆっくりと言いました。
「まだないでおこう」
「ええ」
私はく頷きました。
「あの子が本当に反省し、から謝罪する気持ちになるまで、が必です」
貴は私を見ました。
「いつかは許すつもりだ。だが、今はまだい」
私たちは、息子を見捨てたわけではありません。
ただ、本当ので気づいてほしかったのです。
自分が何を捨てようとしたのか。
何を恥だとってしまったのか。
そのさを、しっかり受け止めてほしかった。
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窓のを見ると、満が美しく輝いていました。
虫の声がくから聞こえてきます。
私は若い頃のことをいしました。
陶芸を始めたばかりの頃、何度失敗しても諦めずに続けた々。
師匠に厳しく叱られ、泣きながらに向かった夜。
でも、そのすべてが今の私を作ってくれました。
痛みを通してしか学べないこともあります。
健太郎にも、そういう経験が必なのかもしれません。
貴が、そっと私のを握ってくれました。
「丈夫だ。あの子はきっと分かってくれる」
「ええ。私たちは、正しく待っていましょう」
夫の温かいが、に染みました。
翌朝、で作品を作っていると、またスマートフォンが鳴りました。
今度は健太郎からのメッセージでした。
通を見ると、文のようでした。
けれど、私はまだきませんでした。
期が来たら読もう。
そうい、再び轆轤に向きいました。
回るを見つめながら、ふといました。
この作品も、度形を崩してから、また作り直すことがあります。
壊すのは、終わらせるためではありません。
より良いものを作るためです。
健太郎との関係も、今は度壊れてしまったのかもしれません。
けれど、いつかもっとい絆で結ばれるが来るかもしれない。
貴と私は、今も穏やかなを過ごしています。
質素に見えるかもしれないこの暮らしのに、私たちにとっての本当の豊かさがあります。
そしていつか、健太郎がそれに気づくを、私たちは静かに待っているのです。
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