"更地にした二千万の家" 第3話
私は笑った。
「ええ。ようやく決がついたんです」
午の営業を終えると、私は番きな産会社へ向かった。
担当の田という男性が応接に通してくれる。
「本はどのようなご用件でしょうか」
私は登記簿を机に置いた。
「を売却したいんです」
「売却希望の物件は?」
「これです。先完成したばかりの築です」
田は驚いた顔をした。
「築をですか。何かご事が?」
私は静かに微笑んだ。
「族の事です」
田はそれ以く聞かなかった。
「名義は原かずよ様。ご主の同は?」
「主はにくなりました」
「息子さんの同は必ですか?」
私はまっすぐ答えた。
「いいえ。息子は関係ないですから」
マリの言葉を、そのまま返した。
田は資料を確認し、卓を叩いた。
「も良く、築ですから千万円ほどで売れるといます」
千万円。
千万円の資が倍になる計算だった。
だが、私の目はおではなかった。
田がふといしたように言った。
「ただ、によっては更にした方が売却価格ががることもあります」
私は顔をげた。
「更?」
「はい。建物が築でも、買いによってはだけを求める方もいます」
ので何かが静かに決まった。
「いいですね。更にしてください」
田は目を見いた。
「本当によろしいんですか? せっかくの築ですよ」
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私は窓のを見た。
「なんて、むがいなければただの箱です」
そして静かに続けた。
「私の族は、もういませんから」
田はさくうなずいた。
「解体費用は百万円ほどかかります」
「構いません」
「配もこちらでできますが」
「できるだけくお願いします。今週に」
田は話をかけた。
「田さん、急ぎの解体案件があるんですが……はい、築です。事がありまして」
話を切ったあと、田はこちらに向き直った。
「から入れるそうです。ほどで更になります」
「完璧ね」
私はちがった。
その夜、久しぶりにぐっすり眠った。
翌朝。
私はいつものようにパンを焼いていた。
は議なほど穏やかだった。
半。
田建設のトラックが築のに到着する。
作業員たちはをろし、現監督が指示をばした。
「所者の正式な依頼だ。今から解体に入るぞ」
その頃、幸の携帯が鳴った。
所のからだった。
「幸君、君の築のに事両が来てるけど」
「事?」
幸は慌ててマリに話した。
しばらくして、マリから折り返しが来る。
声が震えていた。
「幸、変よ。解体事が始まってる」
「解体? 何の冗談だ」
「冗談じゃないわ。今、がを壊し始めてるの」
幸は仕事を放りし、をばした。
現に着いた、完成したばかりのにがい込んでいた。
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「何してるんですか!」
幸が作業員に駆け寄る。
現監督は類を確認しながら答えた。
「所者の原かずよ様からの依頼です」
「原かずよ……?」
幸の顔から血の気が引いた。
その、私は現に到着した。
「幸、マリさん。どうしたの?」
幸が叫んだ。
「母さん、何してるんだよ!」
私は微笑んだ。
が壁を壊す音が響いた。
幸は顔を真っ赤にして私に詰め寄る。
「ここは俺たちがむだろう!」
私は首を傾げた。
「む? でも私には関係ないわよね」
マリの顔が青ざめた。
私はマリを見た。
「だって言ったでしょう。むのは私の両親ですよ、って」
マリはをけたまま何も言えない。
幸が震える声で言った。
「母さん、正気か。千万円もしたんだぞ」
「資?」
私は静かに笑った。
「あなたたち、あれは贈与だって言ったわよね。の購入資でしょうって」
「それは……」
私はバッグから枚の類をした。
「これ、あなたたちが私にサインさせようとした確認よ。同居の約束はなかったっていてあるわね」
幸の顔が固まった。
「約束に過ぎないんでしょう? トラブルを避けるためだって言っていたわよね」
その、がきな音をてて根を崩した。
マリが叫ぶ。
「やめて! 来週、私の両親が来るのよ!」
「でも私には関係ないわ」
私は穏やかに答えた。
「だって私はもう族じゃない。関係ないなんでしょう」
マリは膝から崩れ落ちた。
「謝ります。私が悪かったです」
「何を謝るの?」
「全部です。お母さんを族じゃないなんて……」
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