"海が隠した最後の写真" 第3話
元警察官は、事件が無理に事故として処理されたと認めた。
田が眉をひそめる。
「関係者の話が、全部ばらばらですね」
鈴は窓のの黒いを見た。
「ああ。誰かが必ず嘘をついている」
彼は健太の記をいしていた。
――桜の秘密。
「桜をもう度洗い直す。秘密はそこにある」
200481、警庁未解決事件捜査班のオフィスには、桜の過を調べた資料がのように積まれていた。学の同級に聞き込みをめると、桜の姿がしずつ浮かびがってきた。
同級の彩佳は、桜の名を聞くと懐かしそうに目を細めた。
「桜は本当に芯がくて綺麗な子でした。が貧しくて、アルバイトをいくつも掛け持ちしながら学費を稼いでいました。でもの頃から、急に変わったんです」
「どう変わったのですか」
「級な計をつけたり、そうなを着るようになったり。どこでに入れたのか聞いても、いいアルバイトを見つけたとしか言わなくて」
別の同級、弓子も同じことを証言した。
「急にお遣いが荒くなったんです。学がに何万円も使うなんて普通じゃありません。みんなで噂していました」
捜査チームは、桜の取引履歴を入した。田がずつ確認していると、突然声をげた。
「警部、これはおかしいです。19893から失踪直まで、毎万円が入されています」
広告
鈴は資料を受け取った。
「当の企業の課の並みだな」
入者の名は毎回違っていた。だが、何らかの図な流れがあった。
さらに調べると、桜が座の級クラブで「希」という名で働いていたことが分かった。当の支配、林は写真を見てで笑った。
「この顔を忘れるわけがない。希はうちのエースだったよ。持ちの客に気があった」
鈴は夜、オフィスで、健太の記を読み返した。
――1989610。桜の様子がおかしい。夜遅く帰ってきて、疲れ切っている。何か隠している気がする。
――198975。桜の部で見たことのないダイヤのネックレスを見つけた。
――1989810。すべてをってしまった。でも僕は桜をしている。泣きながら、すべてを終わらせてしく始めようと約束した。
鈴は記を閉じ、く息を吐いた。
健太は恋の秘密をっても、彼女を見捨てなかったのだ。
翌の会議。ホワイトボードには、桜を巡る関係図が複雑に描かれていた。級クラブの客、民宿の野、最にを見た、そして桜の座に入った自然な。
田刑事は資料をもう度見直していたが、突然子からちがった。
「警部、見つけました。決定です」
「何だ」
「桜の座に最に振り込まれた百万円です。入者は藤武志。野の息子、武志の借名座です」
広告
鈴の目が鋭くった。
「かもめ荘の息子か」
「はい。桜が失踪する週、198988に入されています」
確認の結果、武志は当歳で、父親の民宿を伝っていた。鈴はい声で言った。
「単なる失踪事件じゃない。が絡んだ計画犯罪だ」
その頃、笠原の域聞社では、井記者がの事件について記事をいていた。机のの話が鳴り、何気なく受話器を取る。
「笠原聞の井です」
受話器の向こうから、荒れた男の声が聞こえた。
「の学たちの事件について、話したいことがある」
井はすぐにレコーダーのボタンを押した。
「どちら様ですか」
「野ので犬みたいに働いて、刑務所にも入った男だ。あいつに裏切られた」
男は息を荒げながら続けた。
「あの学たちは遊びに来てんだんじゃない。密輸品を運びにってんだんだ」
井のペンがのをった。
「密輸品?」
「野はと物をやり取りする、父島のくの無島を使っていた。遺骨が見つかった、あの島だ」
男はさらに言った。
「あのじじいは、自分の秘密をったを誰にもられずに沈める。俺ももう危ない」
そのまま話は切れた。
、井から報を受けた鈴警部は、オフィスで田刑事と向かいっていた。鈴はくつぶやいた。
「密輸組織か」
散らばっていたパズルのピースが、気にはまり始めた。
「だから遺体があの無島で見つかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51