"海底の防水バッグ" 第4話
「あの子ということだけは、どうにも仲が悪かったな」 「どういった理由で仲だったのですか?」 「さあな。2とも気がい子たちだったからかな。何かにつけて、裏でぶつかっていることがかったよ」 「あの夜、最に佐藤エミさんを目撃したのはいつ頃ですか?」 「11頃だったかな。甲板でに当たっているのを見た気がする」 「その、彼女は1でしたか?」
田刑事の問いに、田の瞳が瞬、激しく揺らいだ。彼は目をそらすように線を窓のへ戻した。
「いや……あまりに昔のことだからな。1だったような気もするし、誰かといたような気もする。記憶が曖昧だな」
田刑事は、田のその泳ぐ線を見て、この男が何か決定な事実を隠しているとく直した。
喫茶をたは、そので鹿児島内へと向かい、子のむマンションを訪ねた。
インターホンを押すと、しばらくしてエプロンをつけたままの40代半ばの平凡に見える主婦が玄関のドアをけた。彼女こそが、当の同僚・子だった。彼女は刑事だと名乗る田の言葉を聴いた瞬、目に見えて体を張らせ、揺を示した。
「警察ですか……? うちに何か御用ですか?」 「佐藤エミさんのことを覚えていますか? 22に同じで働いていた同僚のことです」
子の顔から、瞬にして血の気が引き、真っになった。
広告
「エミちゃん……? 急に、あの子のことをなぜ……?」 「詳しいお話は、に入ってお伺いしてもよろしいですか?」 「あ……はい、どうぞ……」
子は震えるでドアをけ、をリビングへと通した。リビングの子に腰掛けた子は、震えるでの入ったグラスをテーブルに置き、何とか声を絞りした。
「エミちゃんのことで、体なぜ今頃いらっしゃったんですか?」 「からたな証拠品がてきましてね。当の状況を再確認しているところです」
子が握りしめていた湯呑みのが、カタカタとかすかに音をてて震えていた。田刑事はそのをじっと観察しながら、に問いかけた。
「あの夜、内で佐藤エミさんと激しい論になったという証言がありますが」 「あ……それは、本当に些細なことだったんです!」
子は慌てて否定するように声を裏返した。
「仕事のやり方のことで、し言い争いになりましたが、すぐに仲直りしました! 本当にしたことじゃないんです」 「具体に、どのような仕事の問題だったのですか?」 「お客様への……対応の仕方がし違っただけでして、本当に、したことではありませんでした」
田刑事は子の目を真っ直ぐに見つめ、さらに歩踏み込んだ。
「佐藤エミさんの、普段の様子はどうでしたか?」 「るくて、優しい子でした。誰にでも親切で……。
広告
ただ……」
子は急に言葉を濁し、うつむいた。
「ただ、何ですか?」 「借がしくて、苦しんでいるようでした。庭の事が、かなり厳しかったみたいで……」 「借ですか?」
田刑事の目が鋭くった。
「はい。お母さんの入院費のために、あちこちからおを借りていたようでした。それで、々1でいため息をついていましたね。だから、私はあの子が自暴自棄になってに……」
子はそれ以語るのを恐れるようにを閉ざした。
夕方、警察署に戻った田刑事は、捜査のホワイトボードのにち、の証言を理した。
「の田は、佐藤エミと子のの確執を話し、子は佐藤エミの銭問題を調した……」
鈴刑事が子の背もたれに寄りかかりながらうなずいた。
「証言の論点が、微妙にい違っていますね。2とも、自分の都の良い方向へ話を誘導しようとしているように見えます。何かを隠していますね」 「1988当の、この2の取りと資産状況を、もう度最初から洗い直せ。何かが見つかるはずだ」
田刑事はホワイトボードのの名に力く赤線を引いた。
翌朝、捜査で古い名簿をめくっていた鈴刑事が、別の青いファイルを抱えて田刑事のデスクへと慌ただしくづいてきた。
「班! 佐藤エミさんの当の周辺物を再調査していて、非常に興い点を見つけました」
「何だ? 話してみろ」
田刑事は元の資料から顔をげた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第13話
八百万円の泥棒とされた妹、九年目の審判
九年前に八百万円を持ち逃げして失踪したとされる妹。その金庫が、元婚約者の実家の庭、厚さ二十センチのコンクリート直下から未開封のまま掘り出された。 「腹いせに捨てたのよ」と喚く元義母だが、金庫の底にあった妹の携帯には、未送信の悲痛な下書きが残されていた。 泥棒の家族として親を失い、蔑まれて生きてきた姉・綾乃は、完璧に塗り固められた「被害者一家」の嘘と対峙することを決意する。真実|裡の顔|行方不明|金銭問題|修羅場2.0万字5 26 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95