"十年介護を捨てた日" 第7話
母はテーブルに座り、笑顔で私を見つめる。「ゆっくりべなさい」と言。たったそれだけの言葉で、が温かくなる。義母の体を支える々とは違う、に包まれた空だった。
正午を過ぎ、域の母親学級のボランティアにかける準備をする。スーツケースから資料を取りし、母に軽くを振った。「ってきます」。母は軽く頷き、キッチンで片付けを始める。私の取りは軽く、以のような疲弊はない。を歩くと、の匂いがをくすぐり、空気が清らかにじられる。
午1。学級会に到着する。若い母親たちが既に集まっており、目を輝かせながら私を迎えた。「井先、赤ちゃんが夜泣きして困っているんです」と声がかかる。私は子に座り、子どもたちの様子を観察する。さな、泣き顔、ぐずる声。37助産師として見てきた景と同じだが、今はそれが私のびだ。
私は子守をい、抱っこして体を揺らす。赤ちゃんのが私の肩に触れ、しずつ泣き止む。母親たちは謝の表を浮かべ、メモを取りながら私の話を聞く。その景を眺めて、胸がくなる。無料の介護士扱いされた々、暴言に耐えた々は、今ここで価値に変わっている。
夕方、帰宅する。母が台所で夕を準備しており、ばしい匂いが部に漂う。伝いながら、今の来事を話す。
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笑い声が部に響き、久しぶりに庭らしい温かさをじる。窓の、夕が赤くを染めている。過の苦労がしずつ報われる瞬だった。
夜。私はベッドに横になり、静かに井を見げる。スマートフォンには着信も通もない。10、耐え続けたはもう過だ。これからは自分ので々を選べる。布団ので軽く目を閉じ、く息を吸い込む。よい静寂とともに、からのしい活が待っていると実した。
翌、午10。私は所のスーパーで買い物をしていた。カートを押しながら、ふと見慣れた顔を目にした。勝の元同僚だった。彼は驚いた表でこちらを見て、軽く会釈した。
「井さんの奥様ですね」
私は笑顔を作りながら首を振った。「もう元妻です」
同僚はさく息を吐きし、周囲を見渡してから言った。
「実は勝さん、変なことになっているそうですよ。介護疲れで倒れ、活保護を受けているとか」
私はカートを止め、に握った袋を軽く握りしめる。過に鳴られ、侮辱された々をいす。だがにりはない。報いを受けているだけだと、静かにった。
「義母は?」
「くなったそうです。葬式もせなかったらしい」
私は頷き、何も言わなかった。関わりのないの末を、ただ静かに受け止めるだけで分だった。
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そので自宅へ戻ると、母が庭のにをやっていた。さな陽がづき始めている。母は微笑み、私を見た。「静、今は元気そうだね」
私は笑って頷く。「はい、これからの活を楽しみます」
午、私は域のボランティア講座に向かう。赤ちゃんたちと接し、母親たちの質問に答える。教の窓から差し込むが、子どもたちの髪を柔らかく照らす。ここにいるだけで、自分のを取り戻した実がある。
夕方、帰宅、母と緒に夕を作る。卓には笑顔があふれる。テレビから流れるニュースに目を向け、々母と会話を交わす。その平穏は、10の苦労を経て、ようやくに入れた宝物だった。
夜、私はベッドで記をく。今の来事を簡単に記録する。赤ちゃん学級での質問、母の笑顔、そして自分のの変化。記録をくが止まらない。文字にするたびに、自分のが確実ににんでいるのをじる。
窓のにはが瞬き、夜の静けさが部を包む。私は呼吸し、穏やかな気持ちで目を閉じる。10の介護獄から、自由と尊厳を取り戻したのだ。これからの々は、自分で選び、自分できるだ。
半。私は都部の2LDKマンションに引っ越した。実の母には事を説し、配させたが、「静には静のがある」と背を押してくれた。
具をえ、荷物を片付け、窓をけると朝が部いっぱいに差し込む。
朝6、目覚まし計の音で目を覚ますが、もう義母や勝のために起きる必はない。
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