"壁の中の妻" 第1話
2016815午3、野県松本島にある造戸建ての宅。が差し込むリビングのには、剥がされた壁や剥した膏ボードの破片が散乱していた。リフォーム事の現作業員である田は、汗を拭いながらい鉄製のハンマーを両で握り直した。彼は目のにある古びた内壁に向き直り、解体作業をめるべく、きく腕を振るってハンマーを叩きつけた。
トントン、と鈍い音が内に響いた。しかし、田はその衝撃がに伝わった瞬、自然に眉をひそめてを止めた。彼はもう度、し位置をずらして同じ壁を軽く叩いてみた。やはりの壁とはらかに違う、どこか奥で共鳴するような妙な響きがじられた。田はハンマーを傍らのに置くと、振り返って数メートル先で図面を確認していた作業班に向かって声をかけた。
「班、ここちょっとおかしいですよ。叩いた音がの所と全然違います」
呼びかけられた作業班は、にしていた図面を丸めて脇に抱え、田のいる壁際へとゆっくりづいた。20のキャリアを持つベテラン作業員である班にとっても、このような般宅の解体現でこれほど奇妙な響きがするケースは初めてだった。班は作業ズボンのポケットから属製のメジャーを取りすと、壁の端から端へと当てて目盛りを慎に読み取った。
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「35cmか……」
班は驚きを隠せない様子でメジャーを巻き戻した。の通常の壁のさは15cmであるのに対し、この部分だけは倍以のみがあった。2は顔を見わせ、首をかしげた。
「配管でも通っているのかな? とりあえず壊してみましょう」
班が図面でその位置を指差しながら確な指示をした。田は再びハンマーを握り締め、本格に壁の解体に取りかかった。
力を込めて振りろされたハンマーが、壁の表面をく打した。最初の層が激しく崩れ落ち、周囲にセメントのいが激しくいがった。田がでを払いながら奥を覗き込むと、そこには驚くべき景が広がっていた。
「おや、壁がになっていますね」
層目の奥から、さらにもうつの固な壁が現れたのだ。それは般宅の隠し壁としては滅に見られない、異様な構造だった。班は田の肩を叩き、顎で先を促した。
「続けて壊してみましょう」
2は息をわせ、2層目の奥にあるコンクリートの壁を壊し始めた。ハンマーが打撃を刻むたびに埃がいがり、部の界を遮っていく。そして、ガリガリといセメントの層が砕けた、まさにその瞬だった。
ガラガラ、と壁の内側の暗から、何かがへと崩れ落ちる乾いた音が響いた。田はきを止め、腰のベルトから懐灯を引き抜くと、そのを壁の亀裂からじた暗黒の隙へと向けた。
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の輪のに、いくつかの丸みを帯びた物体が浮かびがった。最初は単なる古いころか、コンクリートの塊かとった。しかし、田が壁に顔をづけ、の焦点を絞ってよく見た瞬、彼の顔から気に血の毛が引いた。
「うわあ!」
田は激しい鳴をげてろにびがった。その拍子に、に持っていたハンマーがガタガタときな音をててに落ちた。それはではなかった。空洞の奥からこちらを凝しているような、まぎれもないの蓋骨だったからである。
「なんだこれは?」
作業班が田の異常な様子に気づき、急いで駆け寄った。班は田のスマートフォンが落ちそうになるのも構わず、自らの懐灯で壁のを隈なく照らしした。が奥へ届くと、そこにはさらなる衝撃な景が広がっていた。肋骨、腕の骨、の骨が、乾燥したとセメントのに混ざりい、崩れた壁の隙に気に堆積していた。そしてその骨のすぐ横には、経劣化で黒く錆びついた鍵の束と、古びた茶の革の財布が静かに置かれていた。
班は即座に周囲の作業員を見回し、声で全ての作業を断させた。
「全員へてください! ここにあるものには切触らないでください!」
班は田のを引いてリビングから連れすと、震えるでポケットから携帯話を取りし、110番に通報した。
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