"24年目の手紙" 第10話
とお母さんに送る、最の絶叫だったのです。
健には、お母さんがまだ神戸のあの古いにいるという確信はありませんでした。24というあまりにもいが流れていました。を引っ越したかもしれないし、あるいはすでにこの世をっているかもしれない。しかし、健ののには、あのの所が鮮に焼き付いていました。坂を登り切った、の突き当たりの2件目。子供の頃、毎元気に駆けりていた、あのの所。健は便箋に向かい、を何度も、何度もき直しました。
どんな言葉で始めればいいのか分かりませんでした。24の空のみを、どうやってわずか2枚の便箋に込めればいいのか分かりませんでした。そして何より、自分を連れったの組織の名を直接くのが、アメリカにいてもなお恐ろしかったのです。もしこのが、途で誰かのに渡ったらどうしよう。だから、健は各段落の最初の文字に、その憎むべき名を隠しました。お母さんが気づいてくれることを願いながら、あるいは、を受け取って読む本の誰かが気づいてくれることを祈りながら、ポストへと投函したのです。
よし子は、警察からこの健の過の話を伝え聞きながら、古いリビングの子に座ったまま、い言葉を発しませんでした。
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健がを何度もき直したという刑事の言葉から、恐怖に怯えながらも、お母さんへのいをどうしても諦めきれなかった息子の痛いほどの未練をじ取ったからでした。 よし子は静かに涙を流し、呟きました。 「うちの健、どんなに怖かっただろう。1きりで、どんなにたくさん泣いただろうね……」
応対した担当の刑事が、よし子のに枚のメモを差ししました。 「お母さん、健さんがの最に、現の連絡先を残しています。アメリカの話番号です」 よし子はそのを受け取りました。彼女のが、また激しく震え始めました。 「私から、話してもいいんでしょうか……?」 「もちろんです」
よし子はそのメモを切に握りしめ、に帰りました。そして健の部に入り、たいに座り込みました。壁に掛けられた、昔から使っている古い黒話をじっと見つめました。ダイヤルを回さなければならないのに、指がすくんできませんでした。また、恐ろしくなったのです。もし話をかけて、健の声じゃなかったらどうしよう。もし、何かの違いで違った番号だったら……。
よし子は目を閉じ、1度く息を吸い込みました。そして、を決して受話器を取りげ、メモの数字通りにダイヤルを回しました。ジーコ、ジーコと、静かな部にダイヤルの戻る音が響きます。
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受話器をに当てると、い異国のへと繋がる子音が鳴り響きました。 プルルル、プルルル、プルルル。
呼びし音が3回鳴りました。そして、ガチャリと音がして、誰かが話にました。 しばらくの、受話器の向こうから何の言葉も聞こえず、ただ苦しい沈黙だけが流れました。しかし、話線の向こうから、かすかな息遣いが聞こえてきました。その規則正しい息遣いをにしただけで、よし子には瞬で分かりました。 「……健?」
よし子の声が激しく震えました。すると、話線の向こうから、く太い声が聞こえてきました。たどたどしいけれど、はっきりとした本語でした。 「……お母さん」
2はい、次の言葉を何も言えませんでした。話線の向こうとこちら側で、ただお互いの激しい泣き声だけが受話器を通じて響きっていました。太平を挟んで、24というあまりにも残酷なを挟んで、親子の声がようやく繋がったのです。
よし子はになって、所のたちにそののことを語りました。 「その泣き声を聞いたね、健が12歳の頃に、で怖いを見て泣いていたあの声をいしたのよ。声はになって太くなっていても、その泣き声に込められたものは全く同じだった。お母さんを必に呼ぶ、子供のそのものだったわ」
血はよりも濃いと言います。24というい歳も、太平の圧倒な広さも、2のにあった血の絆をめることはできませんでした。
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