"赤いドレスの代償" 第6話
私は温かい茶を入れ、菜々をリビングのソファに座らせた。そして昨夜健から投げつけられた、あの緑の枠の、婚届を静かにテーブルのに置いた。 「お父さんが……?」 菜々は信じられないというようにそのを見つめた。 「そうよ。今週末までにこのからていけと言われているわ」
私の言葉に、菜々の目から再び粒の涙がこぼれ落ちた。 「ひどい……ひどすぎるよ! お母さんがこの26どれだけしてきたか! おじいちゃんとおばあちゃんの介護でボロボロになっても文句ひとつ言わずに尽くしてきたのに! お父さんの会社だって、お母さんが裏で支えなきゃとっくに潰れてたじゃない!」 菜々は私のを両でく握りしめ、ポロポロと涙を流した。娘のその温かい涙と、私の苦労を番くで見守っていてくれたという事実だけで、これまでの26がしだけ救われた気がした。
「菜々、泣かないで。ありがとう、あなたのその気持ちだけでお母さんは分よ」 私は菜々のを優しく撫でた。 shadowを拭って、真っ直ぐに娘の目を見た。 「でもね、配しなくていいのよ。お母さんはただ黙って追いされるつもりはないわ。あのおも、絶対にあなたたちの元へ取り戻してみせるから」 私の落ち着き払った態度に、菜々はし驚いたような顔をした。
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「お母さん……何か考えているの?」 「ええ。し待っていてね。荷物をまとめるに確認しておきたいことがあるの」
私はちがり、健の斎へと向かった。健は「おの荷物などしたものはないだろう」と私を完全に甘く見ている。自分が完全に勝者であると信じ込んでいるからこそ、今の彼はひどく油断しているはずだ。私は斎の机の引きしをけた。いつもなら厳に鍵がかけられている番の引きしが、昨夜彼が何かを探したせいで、ほんのしだけいたままになっていたのだ。
には会社の分いファイルやの封筒が無造作に突っ込まれていた。私はそのから1枚の折りたたまれた類を見つけし、ゆっくりと広げた。それを見た瞬、私の背筋にたいものがった。それは健の会社が最になってから数千万円という額の事業融資を受けた際の、銭消費貸借契約のコピーだった。
驚くべきことに、その類の連帯保証の欄には、私の名「田弓」がはっきりと記されており、さらには私が切に保管していたはずの実印が、くっきりと押されていたのだ。 「なるほど……そういうことだったのね」 私はわずたい声で呟いた。決定な違の正体が、今完全につに繋がった。健はただと緒になりたいから私を追いすのではない。
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会社の経営がのになり、どうにもならなくなった末に、私に無断で実印を持ちし、私を連帯保証にしたのだ。そして私にすべての借を背負わせたで婚し、自分は美と緒に娘の結婚式のご祝儀や私の老資を持って逃げるつもりなのだ。
あまりにも浅で、あまりにも勝な計画。26族として連れ添った妻に対し、彼はここまで酷になれるのか。胸の奥で、静かだったりの炎が音をてて燃えがるのをじた。私は類の写真をスマートフォンで撮し、リビングに戻った。菜々には配をかけないよう、この類のことは伏せておいた。 「菜々、今はもう帰りなさい。直さんにも配をかけてしまうわ。ご祝儀の件はお母さんに任せておいて」 私が微笑んで見送ると、菜々はそうに何度も振り返りながら帰ってった。
になったので、私は再びスマートフォンを取りした。そして話帳のからある物の番号を呼びし、通話ボタンを押した。 「はい、弓先。お待ちしておりました」 話から聞こえてきたのは、静で落ち着いた男性の声だった。 「準備はいました。健は私に無断で借の連帯保証のサインを偽造していました。これ以、けをかける必はありません」 私がそう告げると、話の向こうの男性はく「承いたしました」
とだけ答えた。
そのの夕方、健は自分の会社にあるな物が察に訪れることをり、頂になって美と級レストランで祝杯をげていた。
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