"赤いリボンの手紙" 第1話
たい塩が吹き抜ける横浜の朝は、いつもと変わらない常の景として始まった。 みさ子は玄関のタタキにち、10歳の女・咲と8歳の次女・の髪を本本丁寧に梳かし、お揃いの赤いリボンを結び直してやった。 2の姉妹は互いのをしっかりと握り締め、い息を吐きながらいつもの通学へと歩きした。 みさ子は古い扉にをかけ、曲がり角へと消えていく娘たちのさなろ姿に向けて何度もを振った。 それが、2の娘の最の姿となった。
それから23という果てしない歳が流れた。 2017の、みさ子の髪はすっかり髪に変わり、いシワの刻まれた両は、何も持っていないでも理由なく刻みに震え続けていた。 所の々は彼女ののを通るたびに顔を背け、「娘を失ってからがおかしくなった狂ったおばあさんだ」と容赦ない噂を囁きった。 事件の数ヶ、痛に耐えかねた夫は臓発作で急逝し、そのわずか3ヶにはになった息子の健が交通事故でこの世をった。 賑やかだったはずのから全ての族が消えり、みさ子だけがい静寂のにぽつんと取り残されていた。
その朝も、いつもと同じように平凡な、いや、平凡に見える朝だった。 みさ子がくなった腰をげて古びた扉をけると、錆びついた元に、自然なほど鮮やかな黄い封筒が1つ落ちていた。
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差ししの名はなく、郵便切も貼られていない。 ただ、封筒の表面には、見覚えのある拙い跡で言だけかれていた。 「お母さん」
みさ子は臓の鼓がピタリと止まったかのような衝撃を覚え、そのに激しくへたり込んだ。 震えるで封筒を引き裂くようにしてけると、から23という歳を経て黄く変した切れが1枚現れた。 インクが滲んだ跡があり、の角はボロボロに破れている。 そこに並ぶたどたどしい子供の文字を界に捉えた瞬、彼女は胸が締め付けられて息ができなくなった。 『ごめんなさいお母さん。私たちがいなくなるなんてわなかったの』
みさ子はたい面にひざまずき、涙で界を歪めながらその文字を何度も指先でなぞった。 これは違いなく、8歳でを止められてしまった次女・の跡だった。 みさ子はこの23、の記や宿題のノート、壁の落きのすべてを、捨てることなどできずに切にタンスの奥にしまい込んできたのだ。 なぜ、あのの文字が、今になってここに置かれているのか。 パニックに陥りながらみさ子がを裏返すと、そのにもう1枚、さな絵がなっていた。
クレヨンで描かれたような拙い絵には、暗い部のに座り込む2の女の子の姿があった。 女の子たちのには、象徴な赤いリボンが描かれている。
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背景のコンクリートのような暗い壁の奥には、さくて丸い窓がぽつんと1つだけ描かれていた。 みさ子はその絵の細部を凝した。ひび割れたのタイル、部の隅に置かれたさなバケツ。 これは像で描かれた絵ではない、実際にその気な部に閉じ込められていた者だけがる景だった。 「……咲……きているのね……」 みさ子は声をあげて泣き崩れたが、すぐに涙を拭った。ち止まっているなどなかった。
みさ子はよろめきながらのに駆け込み、古い2段ベッドが置かれた子供部へと向かった。 湿気での歪んだタンスの最段、その奥くから、23誰にも見せたことのない古い靴の箱を取りした。 箱をけると、あのからが止まったままの品々が、当の匂いを残したまま現れた。 19943から6までの、あせた聞の切り抜き。 『横浜女子児童失踪事件、がかりなく警察は捜査打ち切りを検討』
箱のには、当テレビで放送されたニュース番組を録画した5本のビデオテープも入っていた。 みさ子はこの23、毎晩のようにこのテープを再し、娘たちが映るわずか3秒の映像のために、2のノイズを凝しては涙を流していたのだ。 そして箱の隅には、咲とが最に結んでかけた、あの赤いリボンが静かに収められていた。
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