"壁の中の美大生" 第1話
2002105。
湿ったが、梨のをすっぽりと濡らしていた。
のほとりに建っていた古い畔カフェでは、朝から解体事がわれていた。使われていなかった建物は、を吸った材の匂いと、崩れたコンクリートのじんに包まれていた。
々しいショベルカーがい音をて、壁の部を崩すたびに、く濁ったほこりが粒と混ざって空にった。
作業員の1が、きなハンマーをに、残った内壁を片付けていた。壁は古く、ひび割れもかった。だが、ある所だけが妙にく、何度叩いてもの響きが違った。
作業員はを止め、顔をづけた。
「……なんだ、これは」
くつぶやき、壊れた壁の隙にライトを当てた。
のコンクリートの奥に、黒ずんだ布のようなものが見えた。最初は古い断材かとった。だが、布の奥に、の腕のような形が浮かびがった瞬、作業員の喉が固まった。
彼は震えるで、さらに数回ハンマーを振りろした。
壁の隙がしずつ広がった。
暗い空のを覗き込んだ作業員の顔が、瞬で真っ青になった。
「うわああっ!」
魂を抜かれたような鳴が、の解体現に響いた。
壊れた内壁の奥に、ミイラのように干からびたの形があった。
髪はほとんど抜け落ち、皮膚はい革のように黒く変していた。
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はあせ、ところどころ擦り切れていたが、それでも女性の体であることは分かった。
鳴を聞いた現監督が駆け寄り、その景を見るなり息を呑んだ。彼はすぐに携帯話を取りし、震える声で警察に通報した。
まもなく、黄い規制線が古いカフェの周囲に張られた。
の、パトライトを点滅させたパトカーと科学捜査班の両が次々と到着した。
梨県警署の捜査課、伊藤博刑事がい表で現に入った。45歳。刑事として20の経験を持つベテランだった。
そのろには、捜査課に配属されたばかりの、田健刑事が緊張した面持ちで続いていた。
伊藤は壁のでを止め、現を規制していた担当者に尋ねた。
「壁のから遺体が見つかったというのは、どういう状況ですか」
担当者は血の気の失せた顔で、崩れた内壁を指差した。
「あそこです。ご覧の通り、完全にふさがれていた壁でした。そのから……てきたんです」
伊藤はためらわず遺体にづいた。
田もを追ったが、おぞましい姿を見た瞬、わず顔を背けた。
伊藤は横目で田を見たあと、彼の肩を軽く叩いた。
「田君、しっかりしろ。最初は誰でも驚く。だが、これも々の仕事だ」
田は唇を結び、もう度遺体へ線を戻した。
鑑識員たちは袋をはめ、慎に周囲を調べ始めた。
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やがての検官が、懐灯で壁の内部を照らしながら伊藤にづいた。
「伊藤刑事、壁の内部は成分で満たされ、完全に密閉されていました。そのため、腐敗がほとんどまず、遺体はミイラ化したものとわれます」
伊藤は眉をひそめた。
遺体が着ていたは、らかに古い代のものだった。は抜け、布は傷んでいたが、デザインには1990代半の流が残っていた。
田が慎にをいた。
「刑事さん、この装……僕の姉が学代に着ていたスタイルに似ています。1990代半ではないでしょうか」
伊藤はさくうなずいた。
「ああ。だとすれば、なくとも10は経っている能性がある」
その、田が遺体の首元に目を留めた。
「刑事さん、あそこ……ネックレスのようです」
細いの指輪が、糸のような紐に通され、首にかかっていた。
鑑識員がピンセットで慎に取りし、透な証拠品袋に入れた。
伊藤はそれを受け取り、い声で言った。
「これが、元につながるかもしれんな」
はまだり続いていた。
12、壁ので眠っていた女が、ようやくの空気に触れた瞬だった。
2、科学捜査研究所から検結果が届いた。
伊藤は捜査で報告を広げ、な部分を声にして読んだ。
「被害者は20代半の女性。因は部陥没骨折による蓋骨損傷」
田は報告を見つめ、目を丸くした。
「ということは、これはな殺事件ですね」
伊藤はい表でうなずいた。
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