"カラストンネルの失われた未来――12 キロの煽り運転が奪った二つの命" 第4話
属がきしむ音がトンネル内に響く。
救助始から約 3 分。ようやく助席側のドアをけることができた。 妻が最初に救される。識はあるがかなり衰している。 両腕骨折、顔面挫傷。すぐにストレッチャーに乗せられ、救急へ運ばれていく。
次に運転席側のドアを切する。しかし変形があまりに激しく作業は難航した。 午 1 18 分、ようやく父親が救される。識はない。をく打っており、呼吸がい。止の危険がある。 「急いで!」救急隊員が臓マッサージを始しながらストレッチャーで運びす。
最に部座席のチャイルドシートから息子を救する。 11 ヶのさな体。から血を流し、すでに息をしていない。蓋骨折、即だった。 救が完したのは事故から約 25 分である。
失われたつの未来。 午 1 30 分、3 全員が救急で病院へ搬送された。 21 歳の父親は午 2 15 分、搬送先の病院でが確認される。 11 ヶの息子は蓋骨折により即だった。さな体はあの衝撃に耐えられなかった。
助席の妻だけが命を取り留めた。 しかし両腕骨折、顔面挫傷、全打撲。識は戻ったが体をかすこともできない。 病のベッドでただ井を見つめるだけである。
そして数、医師から告げられた。 「ご主とお子さんは残ながら……」
広告
その瞬、彼女の世界は崩壊した。 「嘘?嘘でしょ?」声にならない叫びが喉から漏れる。涙が溢れし止まらない。
たった数まで 3 でに乗っていた。息子の誕プレゼントを買いにく幸せなドライブだった。 夫は優しく笑い、息子は部座席で眠っていた。何の変哲もない穏やかな午だった。 それが今、夫も息子ももうこの世にいない。
方、事故現では田県の交通事故捜査員が詳細な検証を始していた。 面に残されたタイヤ痕、両の損傷状況、トンネル内の壁の傷、全てを記録し、事故の全貌をらかにしていく。 型トラックの運転は現で業務過失運転致傷致容疑で逮捕された。
34 歳の男性は警察官ので何度もをげていた。 「申し訳ありません。本当に申し訳ありません」 しかしその謝罪で失われた命が戻ることはない。
警察の取り調べで運転は供述した。 「イライラしていました。のが遅くて追い越そうとしたら対向が来ていただけです」 警察はそれだけでは説がつかないと判断した。 事故現に駆けつけた型トラックの運転がな証言をしていたからである。
「の駅から約 12km、ずっとろにぴったりついていました。距は 5m もなかったといます。何度もセンターラインをはみして追い越そうとするようなきをしていました」
広告
警察は型トラックの載タコグラフを解析した。 タコグラフとは両の速度、エンジン回転数、ブレーキ操作などを記録する装置である。これを分析すれば運転状況が詳細に分かる。
解析の結果、驚くべき事実がらかになった。 の駅から事故現まで約 12km の、型トラックは異常な運転を繰り返していた。 距 3m から 5m という危険な接、頻繁なアクセルとブレーキの操作。 そして 5 回、10 回に渡るセンターラインのはみし。これはらかに通常の運転ではない。
警察は運転を厳しく追及した。 「なぜそんな危険な運転をしたのか。イライラしてのをどかしたくて追い越す気があったのか」 「はい。でも対向が来るからできなくて」
しかし警察の見ては違った。 もし本当に追い越す図があったなら全を確認して 1 度だけはみせばいい。それを 10 回も繰り返す必はない。これは追い越しではなく威圧為である。警察はそう判断した。
2008 3 11 、田方裁判所で判決がされた。 業務過失致傷罪で懲役 3 10 ヶの実刑判決である。 しかし裁判では煽り運転の事実は確に認定されなかった。 当の法律では煽り運転という概自体が曖昧で確な罰則規定がなかったからである。
遺族はこの判決にい満を抱いた。 「12km もずっと煽られていたのにそれが認められないなんて」
被害者の祖父はいしみのでこう語った。
広告
おすすめ作品
-
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第20話
教室の最後列に座る元教員
定年退職した元教員の私は、一度も教えたことのない男子生徒の保護者会に、身元を偽って六年間通い続けていた。教室の最後列から見つめる先には、油まみれの作業着を着た父親が座っている。受付簿の不審な記録に気づいた校長から昇降口で問い詰められた帰り道、桜が散る坂道でその父親が私の前に立ちふさがった。二十四年前の元教え子だったその男は、振り返りもせず、私の背中に向けて「あの席、あと何年座るつもりですか」と低く告げ怒り|真実|親子関係|修羅場3.1万字5 122 -
完結第21話
優しい教室で震える息子
息子が突然学校に行けなくなり、担任は「いじめなどなくクラス全員に愛されている」と胸を張った。不審に思った私が息子のランドセルを調べると、底板の裏から三十七枚の給食費受領書が出てくる。我が家は困窮などしていないのに、三ヶ月間、生徒全員が日替わりで息子の昼食代を立て替えていた。私が学校へ確かめに行こうとした瞬間、息子は「言わないで」と叫んで床に泣き崩れ、その紙片を必死に胸へ抱え込んだ。怒り|裡の顔|親子関係|金銭問題3.2万字5 6057 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 216 -
完結第24話
妻の手術翌朝、七通の解約通知
妻が胆嚢ポリープの手術で入院した日、私は仕事を優先し「自分で処理しろ」と見舞いを断った。だが翌朝、私の携帯にマンションの駐車場、クレジットカード、父のデイサービスを含む七通の解約通知が立て続けに届く。カードは店頭で弾かれ、ビルのゲート前で立ち往生した私は、妻の報復を確信して病室のドアを乱暴に開けた。点滴に繋がれた妻は、今すぐ元に戻せと詰め寄る私の目の前で、スマートフォンの画面を静かに伏せた。怒り|夫婦|介護|修羅場3.7万字5 193 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第18話
ゴミ箱の隣に座る学年一位
学年1位を守り続けてきた娘が、二学期に入ると突然一番後ろの席に移動させられ、学級委員長も外された。何か処分を受けたのかと学校へ詰め寄る私に、娘は「この席でいいの」とだけ言い、何も説明しようとしない。納得できないまま迎えた参観日、教室の後ろに立つ私は、娘の隣にぽつんと置かれた空っぽの机に気づいた。誰の席なのかと問い詰める私に、担任は教室の隅を見つめ、「娘さんが残してくれと頼んできたんです」と静かに告げた。怒り|真実|孤獨|親子関係|修羅場2.8万字5 161 -
完結第12話
社長夫人と平社員の妻
夫が勤める製造会社の先代社長の遺児であり、全株式の六割を握る筆頭株主である白石遥。彼女はその正体を隠し、現場社員の妻として慎ましく暮らしていた。しかし、先代の跡を継いだ新社長の妻・藤崎麗華は、夫が平社員である遥を見下し、婦人会の席で髪を掴んで「奴隷」と罵倒する。耐えかねた遥が「では、社長を解任します」と告げると、麗華はあざ笑うのだった。数日後、遥の名の入った「臨時株主総会招集請求書」が会社に届き、夫が密かに集めていた四千万円の不正流用の証拠が突きつけられる。窮地に陥った社長夫婦の前に、本当の支配者の正体が暴かれるとき、冷酷な因果応報の幕が上がる。職場逆転|因果応報1.8万字5 228 -
完結第18話
退職金と三百万円の借金
三十二年間勤めた会社を定年退職する日、人事に呼び止められた私は、一枚の紙を突き出された。それは私の名義と私印で作成された、三百万円の福祉貸付金の借用証書だった。返済が済むまで退職金は支払えないと告げられるが、私に借金の覚えなど一切ない。震える手で書類の日付を確認すると、そこには十一年前、夫が急逝して告別式を行っていた日の数字が並んでいた。私は退職の合意書へのサインを拒み、人事の机に手をついた。怒り|退職金|金銭問題|修羅場2.6万字5 603