"死んだふりの母" 第5話
正は、弓の激しい剣幕に対しても全くじることはなかった。 むしろ、その言葉を待っていたかのように、そのい唇の端に静かな笑みさえ浮かべてみせた。
「見、ねえ。実に派な響きだ。だが、その派なのが、被見の命線とも言える医療装置を、許なく止させようとする。民法で言えば、これはらかな『見の任務懈怠』、そして『利益相反為』にあたる。状況によっては、刑法の『殺未遂罪』が適用されても、おかしくはないな」
淡々と、しかし容赦なく法律用語を並べる正の態度に、弓の顔が引きつった。
「な、何よ……! を犯罪者みたいに脅して、笑わせないでもちょうだい! 警察を辞めただのジジイに、体何ができるっていうのよ!」
弓は、己の内部に広がる恐怖を振り払うかのように、さらに声を荒げて病に叫び声を響かせる。
「いいことを教えてあげるわ! このババアの財産も、このババアの命も、今はすべて私たちが管理する権利があるの! それが法律で認められているのよ! 分かったら、部者はとっとと帰りなさいよ!」
その傲な暴言が静かな病に響き渡った瞬、私は、枕元の正がさく息を吸い込む気配をじた。 反撃の狼煙が、がる。
正は弓の罵声を浴びせられても、穏やかな表を崩さなかった。 彼はゆっくりと、ジャケットの内ポケットにを忍ばせると、そこから通の、みのあるい封筒を取りした。
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「部者、か。面いことを言うな、健太、弓さん。君たちが見として、姉さんの財産をどれほど『見事に』管理してきたか、その実績については、私もよくっているつもりだ」
正はそう言うと、にした封筒をの目のに、ひらりと差しした。
「ちょうどよかった。今は君たちに、姉さんの『正式な代理』から、つなおらせがあって、ここにきてもらったんだ」
「代理……? おらせ……?」
健太と弓の線が、その何の変哲もないい封筒に釘付けになった。 その封筒は、まるで獄からの招待状のように、吉な空気を放っていた。 病の空気は再び氷点へと凍りつき、計の秒針の音だけが、やけにきく響き渡っていた。 彼らの5にわたる偽りの平穏が、そのっぺらい切れ1枚によって、もなく々に打ち砕かれることを予させながら。
健太と弓は、正が差ししたい封筒を、まるで正体の爆発物でも見るかのように、訝しげに見つめていた。 その線には、い警戒と共に、「寄りのハッタリだ」と言わんばかりの軽蔑のが隠しきれずに滲みている。 最初にその苦しい沈黙を破ったのは、やはり弓だった。彼女はわざとらしくを鳴らすと、腕を組んで正を見した。
「何ですの、その。遺言でもてきたっていうのかしら? だとしたら残ね。
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お義母様はまだきて病院のベッドに寝ているんだから、そんなもの、法には何の効力もないわよ。それとも正さん、歳を取ってがボケてしまわれたのかしら?」
その言葉は、らかに者に対する敬を欠いた、悪に満ちた侮辱だった。 しかし、正は柳にと受け流し、表つ変えない。彼はただ、静かにその封筒を、健太の方へと真っ直ぐ差しした。
「まあ、けてみろ。君たちにとって、今のに関わる非常になことがかれているはずだ」
促され、健太は恐る恐るを伸ばして封筒を受け取った。その指先が、刻みに震えているのが私には分かった。 彼はチラリと弓の顔を伺い、彼女がイライラとした様子で顎をしゃくって図するのを見ると、ようやく封筒の封を切った。 からてきたのは、質なに印刷された、いかめしい面だった。 番のには、きな文字で『財産管理状況に関する最終通告』と々しい朝体で記されている。 差ししの欄には、私が全幅の信頼を寄せている、古田法律事務所の弁護士、古田先の名が記載されていた。
「な、なんだ……これ……。財産の正流用……使途……見義務違反……?」
面に目を通すうちに、健太の顔がみるみるうちに気へと青ざめていった。 そこには、この5で彼らが私の座から引きした額、勝に売却した価証券、さらには私の自宅を担保にして組んだローンの詳細までが、円単位で正確に記載されていたのだ。
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