"三輪山に消えた家族" 第4話
彼はふと、の母親から聞いた古い話をいした。当、の失踪をに調べていた「駐所の警察官」の話だ。
もうとっくに退職しているかもしれないが、最の望みをかけて、裕はかつて駐所があったの古い通りへと向かった。駐所だった建物は、すでにパトランプもされ、普通の民になっていたが、幸いにもの表札には「田所」という名が残っていた。
裕は緊張で張る指で、インターホンの呼びしボタンを押した。ピンポーンと音が響き、しばらくするとから「どなたかな」という、ししゃがれたい声がして、ゆっくりと玄関の引き戸がいた。
現れたのは、髪混じりの髪をく刈り込んだ、好相といった貌の柄な老だった。彼こそが、かつてこのの駐として事件に向きっていた田所本だった。 裕が分をかし、物置から見つかった桐箱のことを話すと、田所は黙ってく頷き、裕をのへと招き入れた。
きちんと入れのき届いた古い本。磨き込まれたい廊が、靴越しにひんやりとよい。通された客には、古い畳との匂い、そして庭の垣根から漂ってくるクチナシの甘いりが満ちていた。 田所は急須からお茶を静かに淹れると、裕の正面に腰掛け、く刻まれた眉のシワを寄せていをいた。
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「波野さんのところの、いご親戚でしたか……。あの事件のことは、今でも々に見ますわ」
田所の目には、過を懐かしむとは違う、い悔の暗いが宿っていた。彼は湯みを両で包み込み、そこからちる湯気を見つめながら続けた。 「事件として、きちんと捜査できなかった……。いや、させてもらえなかったと言うべきかもしれん」
田所は当の悔しさを絞りすように語った。失踪当、のに部からが侵入した形跡はなく、具が荒らされたような争った跡も切なかった。そのため、当初から警察の層部は、事件よりも「夜逃げ」の線で処理しようとしていたという。 そして、その夜逃げの空気を全体に決定づけたのが、この域帯の主であり、の力者である葉のだったという。
「葉の旦がな、『波野は昔からの使い方 whip が派なとこがあった。夜逃げでもしたんやろ。に騒いでの評判を落とすな』と、そう言うてに触れて回ったんや」 田所の言葉に、次第にがこもる。
波野と葉は、この桜井ので、もう何代にもわたって激しく張りってきた因縁の系だった。特に、から引いてくる農業用の利権や、当たりの良い等の畑の所権を巡っては、先々代の代からずっと沼の対が続いていたのだという。
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「波野がこのから消えることで、最も利益を得るのは誰か。それは、を見るよりらかやった」
田所は悔しそうに顔を歪めた。たちも、のどこかでは葉が何か裏でを引いたのではないかと疑っていたはずだった。しかし、のインフラを備し、祭りの費用をし、政に対しても絶な発言力を持つ葉に逆らえる者など、この閉鎖なには1もいなかったのだ。
「警察の層部にも顔が利くと噂される葉の言で、捜査本部の空気はガラリと変わった。面倒にしたくない、誰もがそう考え、神隠しという便利な言葉にびついた。わしは制を着るとして、本当はもっと踏み込むべきやったのに……」 田所の声が激しく震え、そのく刻まれたシワを伝って、筋の涙が静かに畳へとこぼれ落ちた。
「田舎ので、分にされる恐怖……葉さんを敵に回す怖さ……わしは、それに負けたんです。正隆さんも千代子さんも、あんなにええたちやったのに、申し訳ない……」 正義を貫けなかったの男の、25越しの激しい懺悔。その涙は、単なる遺族への同ではなく、真実から目を背け続けてきた全体の罪を、たった1で背負っているかのように裕の目には映った。
裕ので、これまでバラバラだったすべての点が1本の線で結ばれ、憎むべき敵の姿がはっきりと形を成した。
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